そんなことあるの?と思いきや、議論百出。
15年くらい前、我々がクラウド上に持ってるデータってメールとその添付ファイルくらいで、ストレージサービスがあっても容量は100MBくらいしかありませんでした。でもその後ストレージがどんどん安くなって無料で使える容量も増え、巨大な写真とか動画みたいな重いデータも平気でクラウドに載せられるようになり、企業もいろんなデータをクラウドで管理するようになって、クラウド上のデータ量はものすごい勢いで膨張してきました。でもリアルな世界でゴミの埋立地が足りなくなっているみたいに、デジタルなストレージにも限界が来て、いつか我々の使えるスペースがなくなることがあるんでしょうか? 専門家に聞いてみました。
まず「我々」とは誰/何なのか
フランス国立科学研究センターの准研究教授でCentre for Internet and Societyの副ディレクター、Francesca Musiani氏は、統治ツールとしてのインターネットやインフラについて研究しています。そんな立場から、「我々のクラウドストレージが足りなくなるか?」という問いに答える前に、その問いを明確化することをMusiani氏は提案します。
データの量より質が問題
カリフォルニア大学 電子・コンピューターエンジニアリング教授のJohn D. Villasenor氏は、ストレージ確保に関しては楽観的な見方をする一方、あふれるデータの使い方や質こそが問題だと言っています。
新たなストレージ技術は次々と
カリフォルニア大学のコンピューターサイエンス特別教授のLeonard Kleinrock氏は、インターネット技術の基盤となるパケット網に関する数学的理論を確立した人物です。彼は今まで多くの技術的ブレークスルーを目にし、自らもそれを牽引してきた経験から、ストレージの問題も必ず解決されるだろうと太鼓判を押しています。
需要は人類の創意とともに伸びる
ハーバードビジネススクール 経営学教授兼HBS Digital Initiative コチェアのShane Greenstein氏は、ストレージは足りているように見えても、その使い道も急速に広がっていると指摘します。そしてそのこと自体は、決して悪いことではないようです。
技術より倫理の問題
ウェストミンスター大学 メディアとコミュニケーション研究教授で『Social Media: A Critical Introduction』の著者、Christian Fuchs氏は、ストレージが枯渇しないとしても、そもそもそんな心配をするほど大量のデータが貯まっていく社会への疑問を投げかけます。
パンドラの箱は開いてしまった
ジョージ・メイソン大学 コンピューターサイエンス准教授のEric Osterweil氏は、人間が意味を取り出せるデータの保存が大事だとしつつ、誰もが必ずしも無制限の保存を望んではいないことを指摘します。
潤沢なストレージはお金持ちのもの?
アルスター大学のサイバーセキュリティ教授で同大学Legal Innovation Centreのコエグゼクティブディレクターを務めるKevin Curran氏は、最近のチップ不足も念頭に、「お金持ちだけがデータを保存できる」社会がありうると警告しています。
そんなわけで、クラウドストレージが枯渇することはありうるか?と一口に言っても、いろんな考え方があり、技術だけの問題じゃなさそうです。最近iCloudの容量が足りなくなって、データを減らせないか検討したり、外付けSSDを買ったりした訳者としては、「お金がなければデータを保存できない」状況は近未来のディストピアというよりリアルな現状だと感じます。かといってデジタル資本主義に異を唱えてクラウド使わないってわけにもいかないですしね…。いちユーザーとしては、いつか量子コンピューターやDNAストレージの新技術でストレージ価格がますます下がって、一生分の写真・動画程度なら最安プランでも余裕、みたいな未来を妄想するばかりです。
Advertisement