photo by gettyimages
----------Facebook副社長で、ディープラーニングの父であるヤン・ルカン氏のベストセラー、AIとその中核をなす「ディープラーニング」の過去と現在、そして未来像を語った『ディープラーニング 学習する機械』は、フランスで発行部数10万部に達しました。ルカン氏がエキサイティングに綴った本書から、読みどころをご紹介しましょう。----------【画像】気象庁が使っているスーパーコンピュータ!ビッグデータ駆使の目指すところ
AI研究の今後と課題
photo by gettyimages
今のところ、最も優れたAIシステムをもってしても、人間の脳には到底およばない。人間どころか、猫よりも知能が低い。猫の脳には、7億6000万個のニューロンと10兆個のシナプスが含まれている。当然ながら、猫の近縁で22億個のニューロンをもつ犬にもおよばない。人間の脳には860億個のニューロンがあり、その消費電力は約25ワットである。これに匹敵する性能をもつ機械を設計・構築するのは不可能なのだ。 第1章(編集部注:『ディープラーニング 学習する機械』「第1章 AI革命」)で見たように、たとえ脳の学習原理を理解し、その構造を解き明かせたとしても、その動作を再現するには、1秒あたりの演算回数が約1.5×10¹⁸回という途方もない計算能力が必要になる。 現在のGPUカードは、毎秒10¹³回の演算が可能で、約250ワットの電力を消費する。人間の脳と同等の性能を得るには、このプロセッサを10万個つないだ巨大なコンピュータが必要になる。このコンピュータの消費電力は、最低でも25メガワットに達する。つまり、人間の脳の100万倍のエネルギーを浪費することになるわけだ。GoogleやFacebookのAI研究者は、このレベルの総演算性能を扱ってはいるが、ひとつのタスクで数千以上のプロセッサを連携させるのは至難の技である。 科学的に解決すべき問題は山ほどある。技術的な問題も同じくそうだ。われわれは、現在のシステムの限界を押し広げようと、たゆまず努力してきた。最も有望な道はどれだろうか? 今後の研究に期待できるのは何だろうか?
次ページは:「教師あり学習」に見る機械学習の限界
1/4ページ
最終更新:現代ビジネス