地上波強すぎ? 日本だけが「グローバル超大作」で盛り上がれない理由 稲田豊史の「コンテンツビジネス疑問氷解」|ビジネス+IT
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地上波強すぎ? 日本だけが「グローバル超大作」で盛り上がれない理由
稲田豊史の「コンテンツビジネス疑問氷解」
欧米でのエンタメビジネスは、22本もの映画で描く「マーベル・シネマティック・ユニバース(Marvel Cinematic Universe/通称:MCU)」や、何シリーズにもわたるドラマなどに示されるよう、その内実が大きく変わってきた。膨大な物語の物量、緻密な情報から得られる感動や衝撃は、かつてとは比べ物にならないほどだ。日本がこうした海外の状況をキャッチアップできない背景には、どんな要因があるのか。映画・音楽ジャーナリストの宇野維正氏に聞いた。今回は後編だ。
編集者/ライター 稲田豊史
編集者/ライター 稲田豊史
キネマ旬報社でDVD業界誌編集長、書籍編集者を経て2013年よりフリーランス。 著書は『セーラームーン世代の社会論』(すばる舎リンケージ)、『ドラがたり のび太系男子と藤子・F・不二雄の時代』(PLANETS)、『ぼくたちの離婚』(角川新書)、『「こち亀」社会論 超一級の文化史料を読み解く』。おもな編集書籍は『押井言論 2012-2015』(押井守・著/サイゾー)、『ヤンキーマンガガイドブック』(DU BOOKS)、『団地団 ~ベランダから見渡す映画論~』(大山顕、佐藤大、速水健朗・著/キネマ旬報社)。「サイゾー」「ビジネス+IT」「SPA!」「女子SPA!」などで執筆中。(詳細)
<目次>- 長過ぎるシリーズについていけない?
- アメリカの“ピークTV”に乗り遅れた日本
- 日本は地上波が強すぎる
- アメリカ人は暇なのか?
- ストリーミングサービス乱立時代の到来
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全年齢視聴可能の『ツイン・ピークス』や『24 -TWENTY FOUR-』は日本でも地上波で放映ができた。しかしレイティングフリーの『ゲーム・オブ・スローンズ』などは日本でも有料チャンネルやAmazon Prime Video、Huluといった定額制動画配信サービスでしか観られない。つまり視聴できる客の裾野が、無料の地上波放送より狭いのだ。 とはいえ、それを言うならアメリカの視聴条件もさして変わらない。にもかかわらず、なぜアメリカでは有料放送作品がそこまで人気になっているのか。「アメリカはもともとケーブルTV文化。各家庭が個別にチャンネル契約して有料視聴する習慣が根付いているんです。無料の地上波放送視聴が基本の日本とは違う。 ですからネットの定額制動画配信サービス――日本では「サブスク」という奇妙な略語がつかわれることが多いですが――への視聴環境移行がスムーズにいった。TVモニタにケーブルをつなぐのかネット回線をつなぐのかの違いですし、有料視聴にも慣れている。 しかしアンテナを立てて電波を受ける無料の地上波放送や衛星放送に慣れてきた日本では、視聴環境をがらっと変えなければいけない。また、そもそもの権利元がコンテンンツを塩漬けにしたりしてきた。レイティンングフリーの作品の出しどころがなかったんです」(宇野氏) もちろん、日本には日本独自の有料放送が古くからあった。WOWOWやスカパー!である。ただ、有料放送に多くの視聴者を見込めない日本市場では、大枚をはたいて海外のTVドラマシリーズを買い付けたところでペイできない。「ゼロ年代後半から10年代前半、スターチャンネルやFOXチャンネルなどごく一部の有料局を除いてレイティングフリー作品の日本供給が止まりました。この空白によって、日本における海外ドラマムーブメントは本国アメリカから大きく遅れを取ることになったのです」(宇野氏) Huluの日本上陸は2011年、NetflixとAmazon Prime Videoの日本上陸は2015年と、ピークTVをリアルタイムにキャッチアップするには少々遅かった。Huluの上陸は比較的早かったが、日本での展開に苦戦して2014年には国内ネットワーク局である日本テレビ放送網の傘下になっている。日本は長らく地上波が強すぎたのだ。【次ページ】アメリカ人は暇なのか?お勧め記事
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