IoT向け5G規格「NR-RedCap」対応機器、2023年に登場か:5G NRとNB-IoTの中間

沿って : Ilikephone / On : 17/02/2023

 「NR-RedCap(New Radio Reduced Capability)」は、移動体通信の標準化団体「3GPP(3rd Generation Partnership Project)」が近く発表予定のアップデート仕様で、5G(第5世代移動通信)スマートウォッチなどのウェアラブルデバイスや、セキュリティカメラなどのIoT(モノのインターネット)デバイスの開発を促進すると期待される。現在これらのデバイスは、ほとんどが4G/LTEネットワークで提供されている。

 RedCapは、3GPPの最新の5Gアップデート仕様である「Release 17」の一部だ。同仕様の策定は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のため約9カ月遅れた。現時点では、2022年第2四半期に仕様が確定する予定で、早ければ2023年半ばにRedCapを適用した最初の市販デバイスが発売されると見通しだ。

「RedCap」はどんな仕様なのか

 RedCapとはどのような仕様なのだろうか。“Reduced Capability”とは、このアップデート仕様を適用した5G機器で必要とされる帯域幅が狭いことを意味している。現在の5G NR無線アクセス仕様ではサポートしているチャンネル帯域幅は100MHzだが、RedCapデバイスははるかに狭い20MHzで動作できる。

 RedCap策定の背景には、「ウェアラブルデバイスやハイエンドIoTアプリケーション向けに、複雑ではない新しいNRデバイスを定義し、NB-IoT(狭帯域IoT)やLTE-MなどのLPWA(Low Power Wide Area)技術より高速なデータ伝送速度を提供する」という狙いがある。RedCapユニットは、速度はマルチギガビットの5G NRデバイスに迫るほどではないが、価格は現在のハイエンド5Gスマートフォンよりも手頃になる見通しだ。

IoT向け5G規格「NR-RedCap」対応機器、2023年に登場か:5G NRとNB-IoTの中間

 Sierra Wirelessのチーフサイエンティストを務めるGus Vos氏は、RedCapが、Cat4 LTEデバイスの5G NRバージョンを提供するものと考えているという。Vos氏は、「最終的にチップセットの価格は20米ドルに、伝送速度は30M〜80Mbps(ビット/秒)に落ち着くと予想される」と述べている。

 「そうなれば、RedCapデバイスは、数百米ドルのマルチギガビット5G NRチップセットと、近い将来発売される10米ドル以下のNB-IoTチップセットの中間の製品になる」(Vos氏)

NR-RedCap(New Radio Reduced Capability)の位置付け 出典:Sierra Wireless

 RedCapチップセットはまた、ウェアラブルデバイスに実装できるように非常に小型化されると予想される。AppleやSamsung Electronicsなどの大手民生機器メーカーは、RedCapチップを採用した5Gスマートウォッチなどのウェアラブルデバイスをまだ発表していないが、次世代製品に実装される可能性が高い。

 将来的には、現在4G/LTEチップを使用している医療用ウェアラブルデバイスや、衰退しつつある3G接続からのアップデートを図っているウェアラブルデバイスにも、RedCapチップが採用されると予想される。

 Ericssonは、「RedCapチップセットは、5Gウェアラブルデバイスや産業用ワイヤレスセンサー、ビデオ監視カメラなどに採用されるようになる」と述べている。Vos氏は、「最初のRedCapチップは、既存の5G NRチップの“焼き直し”であり、異なるフロントエンドを使用し、限られた帯域をサポートし、可能な限りコストを削減するものになる」と予測している。

 NRの標準的な4本のセルラーアンテナではなく、1本のアンテナでサブ6GHz帯とミリ波(mmWave)帯の両方をサポートするRedCapチップを導入するには時間がかかるだろう。Vos氏によれば、初期のRedCapチップセットでウェアラブルのバッテリー寿命を確保したいと考えているベンダーは、当初は期待できない、という。Vos氏によると、「本物のRedCap」はさらに小型化され、より優れたバッテリー寿命を実現するが、市場に出るまでにはまだ時間が必要だ。

 だが2023年半ばまでには、初期のRedCap製品が登場することが期待される。

【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】