夫の定年前に妻が知っておくべき税金の話。退職金からいくら引かれる?
夫が定年退職したときの退職金を、額面どおり受け取れると思っていませんか?退職金にも毎月の給与のように所得税と住民税がかかります。では、退職金から引かれる税金は実際どれくらいなのでしょうか。 妻が知っておきたい税金の話として、今回は退職金から引かれる所得税と住民税について解説します。
退職金とその範囲
退職金とは、一般的に退職に伴い勤務先から通常の給与とは別に支払われるものです。長年、会社に貢献してきたことに関する慰労や、退職後の保障などの意味を込めて勤務先から支払われます。 退職金は法律上で定められたものではないため、転職が当たり前となり、終身雇用が崩壊したともいわれる現在においては、退職金制度がない企業が増えています。一方で、退職金の支給を就業規則などで定めている場合、通常の賃金のように雇用主には退職金の支払義務が生じます。そして退職金は税制上、退職所得として扱われます。 退職所得について国税庁のホームページでは、「退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与およびこれらの性質を有する給与(これらを「退職手当等」といいます。)に係る所得」とあります。 具体的にいうと、勤務先から受け取る退職金はもちろん、解雇予告手当や未払賃金立替払制度によって国から弁済を受けた給与分、一時金で受け取ったiDeCoや企業年金なども退職所得に該当します。
退職所得にかかる税金はいくら?
退職所得と、それに生じる所得税は、通常の給与(給与所得)とは分けて独自の計算式によって算出します。簡単に説明すると、退職所得にかかる所得税は退職金から退職所得控除を差し引いて、さらに2分の1にしたものを課税部分として所得税を計算します。
図表1
出典:国税庁 「タックスアンサー(よくある税の質問) No. 1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」 退職金が税制上で優遇されていると時折いわれることがありますが、それは図表1にある退職所得控除額の存在と、その控除後、さらに2分の1にした金額に税率をかけて所得税が算出される点にあります。では、30年間勤続した方が定年退職して2500万円の退職金を得たと仮定し、退職金にかかる所得税を計算してみましょう。この場合、勤続年数が20年を超えているので退職所得控除額は下記となります。 ・800万円+70万円×(30年-20年)=1500万円 支給される退職金から上記の退職所得控除額を差し引いた課税退職所得は、下記のとおりです。 ・2500万円-1500万円×2分の1=500万円 この500万円に対して所得税がかかるため、20%の所得税率を乗じて控除額を差し引いた所得税は下記の金額になります。 ・500万円×20%-42万7500円=57万2500円 復興特別所得税も加えると、所得税全体の金額は下記となります。 ・57万2500円+(57万2500円×2.1%)=58万4522円 退職金には所得税だけでなく住民税もかかります。住民税は課税所得金額(今回の例では課税退職所得500万円)に対して10%の税率で課税されるため、50万円となります。 会社員などの場合、通常、住民税は収入が発生した翌年に納めるものですが、退職金に限っては支給時に差し引かれます。つまり、2500万円の退職金を受け取ったとしても、所得税と住民税を引いた手取額は2391万5478円となります。
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最終更新:ファイナンシャルフィールド