[「iOS 6」ファーストインプレッション] 地図アプリが大きく変わった最新のiOS - ケータイ Watch

沿って : Ilikephone / On : 18/09/2022

 iPhoneやiPad、iPod touch向けのOSの新バージョン、iOS 6の配信が開始された。iOS 6については、6月に開催された開発者会議「WWDC」にてさまざまな変更点が明らかにされているが、それらの変更点はどのような内容なのか、実際に使ってみてのレビューをお届けする。

 iOS 6がインストールできる機器としては、iPhone 3GS/4/4S/5、iPod touchは現在最新の第4世代と10月発売予定の第5世代、iPadはiPad 2と今年発売の最新iPad(第3世代)が挙げられている。初代iPadが除外されたのは残念だが、HT-03Aなどと同時期にあたる、2009年発売のiPhone 3GSが対応しているのはちょっと凄い。

 iOS 6へのアップデートはiTunesでも行えるが、iOS 5からならば、iOS機器単体でもアップデート可能だ。問題が発生しなければ、データを消さずにアップデートできるが、トラブルでデータが消えるのが心配ならば、いったんiTunesでバックアップすると良いだろう。ちなみにメジャーアップデートということもあり、たとえばau版iPhone 4Sではデータは600MB以上あった。時間も電池もそこそこ必要なので注意しよう。

 iOS 6では、標準アプリである「マップ」アプリが大きく変わっている。iOS 5以前では、アプリ内の地図サービスはGoogleが提供していたが、iOS 6では、アップル自身が提供するようになった。

 「マップ」アプリから確認できるコピーライトの中に「(C)INCREMENT P CORP」とあるので、日本の地図はインクリメントPが提供していると思われる。地図データはしっかりしているはずだが、しかしその見せ方がかなり悪いと感じられた。

 以下の画像を見て欲しい。左がiOS 6、右がiOS 5の「マップ」だ。同じ場所(新宿駅周辺)を同じ縮尺に調整している。

iOS 6の「マップ」iOS 5の「マップ」

 見ての通り、iOS 6の「マップ」は、圧倒的に情報量が少ない。主要な建物や鉄道路線が表示されないので、マップ中央、新宿駅の巨大なホームと駅舎がある位置は、空き地があるようにすら見えてしまう。鉄道路線はここから1段階、建物はここから3段階も拡大しないと見えない。

 筆者は建物や鉄道路線をランドマークとして、地図と現実の位置を一致させるのだが、これはかなり使いづらくなった印象だ。駅などの主要な施設は、アイコンで示されるが、そのアイコンもわかりにくく、新宿駅くらいの広大な施設だと、アイコンが変な位置にあったりしてさらにわかりにくい。

 アップルはこれまで、たくさんの斬新なプロダクトを世に出してきた。発表時に「これは斬新すぎて受け入れるのは無理じゃないか?」と思わせるものも少なからずあったが、それらも実際に使ってみると、「実はこれが使いやすいのか!」と感じることが多々あった。しかし、この新しい「マップ」については、受け入れられる自信がない。

 ちなみにiOS 5までの地図とは異なり、iOS 6の地図はベクトルデータで提供されている。回転や拡大は、非常に美しくスムーズだ。とくに回転では、従来は文字ごと地図が回転していたのが、iOS 6では文字は回転しなくなっている。

経路Appの一覧

 地図の見せ方が変更になった以外にも、ルート案内機能にも変更が加えられている。徒歩と車によるルート検索は従来通り、標準機能として利用できるが、電車などの公共の交通機関を使ったルート検索は、サードパーティの対応アプリを使うことになっている。

 この原稿を書いている時点では、ルート検索用のアプリとしては「駅すぱあと」と「NAVITIME」がリストアップされている。公共交通機関を使ったルート検索をすると、路線検索に使用するアプリの検索画面に移るので、そこでアプリを選択すると、アプリごとの動作が始まる。「駅すぱあと」の場合は、すぐに乗換案内の候補一覧が表示され、詳細から徒歩の部分をタップすると、さらに「マップ」に戻り、徒歩の部分のナビが行われる。一応はアプリ間連携をしてくれるが、しかし1つのアプリで全てできることに比べると、格段に不便だ。

iPadで見る富士山

 このほかにも「マップ」アプリには、「Flyover」という新機能も加わっている。これは航空写真を斜めから見た鳥瞰図として表示する機能だ。発表会などでは、3Dモデル化した建物の中を飛ぶようにスクロールしていく様子がデモで示されているが、建物の3Dモデル化に対応しているのはアメリカと一部地域だけで、日本は今のところ対応していない。地形は3D表示が可能なので、富士山を見たりして遊ぶことはできるが、実用性はあまりなさそうだ。

 iOS独自の音声認識エージェント機能「Siri」は、iOS 6で強化されている。

Siriからのツイート画面

 まず、TwitterとFacebookを「Siri」からコントロールできるようになった。「○△□とつぶやく」や「○△□とFacebookに投稿」と話しかけると、文章入力済みの投稿画面が表示されるので、そこで「送信」をタップするか、「送信」と話しかけることで投稿される。Siriを起動できれば、あとはハンズフリーでつぶやけるというのはなかなか面白い。

 「Siri」で検索できる情報も少しだけ増えているが、これは少し微妙だ。

 まず、新たな検索対象として、「スポーツ」が追加された。プロスポーツの試合結果を検索できるようになっているが、どうにも日本のプロスポーツには対応してない模様だ。「ジャイアンツの試合結果」だとサンフランシスコ・ジャイアンツの試合結果が検索され、「ダルビッシュ有の成績」だとダルビッシュのメジャーでの成績が表示される。一方で「ベイスターズの試合結果」や「三浦大輔の成績」では検索できない。日本のプロ野球情報の提供を受けていないようなのだが、これで日本対応と謳うのはいかがなものかと思う。

Siriによる映画情報

 「道順」と「ローカル検索」、「レストラン情報」の「Siri」検索は、当初非対応とアナウンスされていたが、10月から対応することが明らかにされている。しかし地図やSiriのスポーツ情報を見るに、iOSは日本ローカルの情報に弱い印象を受けるので、心配は募る一方だ。

 北米などでは「レストランのレビュー」と「レストランの予約」、「映画のレビュー」、「上映時間」が追加されているが、これらは日本の対応はアナウンスされていない。「映画情報」は検索できるようになったが、上映時間やレビューを見られないので、実用的に意味があるか疑問なところだ。

Passbookには何も入っていない

 iOS 6からの完全な新機能としては、アップルによるおサイフケータイ的なサービス、「Passbook」が加わっている。

 これは、iPhoneをカードやチケットの代わりに使うためのプラットフォームだ。サードパーティは「Passbook」を自社のカードやチケットとして使うためのアプリを提供し、「Passbook」アプリはカードやチケットに相当するバーコードや2次元コードを表示する。それだけでなく、チケットの期限を設定したり、位置情報と連動したりもする。

 という機能があるらしいのだが、残念ながらこの原稿を執筆している時点では、日本で使えるコンテンツは見つからなかった。ここはこれからの充実に期待したいところだ。ちなみにこの「Passbook」は、iPadでは利用できない。

 以前のバージョンからTwitterがiOSに組み込まれて、いろいろなアプリからツイートできたりしたが、iOS 6ではFacebookもiOSに組み込まれた。こちらは単にいろいろなアプリから近況を投稿できるだけでなく、連絡先やカレンダーをiOSネイティブアプリと同期させたり、App StoreやiTunes Storeで「いいね!」が使えるようになっている。

共有写真の通知はサムネイル表示される

 共有という点では、iCloudのフォトストレージ機能「フォトストリーム」が共有機能に対応した。「写真」アプリから共有フォルダへのリンク付きメールが作成でき、共有後は、写真アプリ内で共有メンバーの整理や共有フォトストリームの削除などが行える。Webブラウザなどに飛ばないのでわかりやすい。共有された写真には共有メンバーがコメントを書いたりすることもできる。

 共有するメンバーは、Apple IDが必要だが、共有された写真は、iOS端末であれば、「写真」に共有フォルダが表示され、追加があると自動アップデートされ、新着通知もされる。これもユニークな仕組みだ。

 ちなみにこの共有フォトストリーム、同日アップデートされたMac OS X Mountain Lionでも標準機能として搭載されており、共有通知などはメールとは別にも表示されるし、アップルの写真管理ソフト「Aperture」などでも自動同期するようになる。WindowsパソコンもiCloudのソフトウェアをインストールすることで、共有を含めた同期が可能になるが、やはりiPhoneとの機能連携は、Mac OS Xの方が段違いによくできている。

 iOS 6では、ケータイとしての基本であるコミュニケーション機能も地味ながら強化されている。

着信中、右のアイコンを上にフリックすると、この画面になる

 まず着信した電話に出られないとき、単に拒否するだけでなく、拒否した上でメッセージを返信したり、リマインダー(iOSのToDoリスト機能)に折り返し電話のタスクを追加する、といったことが簡単な操作で行えるようになった。iPhone内には伝言メモ(簡易留守録)機能がないので、この手の機能はありがたい。

 「メール」アプリは、VIP登録された人からのメールを検索表示する「VIP」という機能が追加されたりしているが、iOSユーザーにとっては、メール作成時に本文ダブルタップ or ロングタッチで写真やビデオを添付できるようになったことが大きな変化かも知れない。これまでが不便すぎだったとも言えるわけだが……。

 これまでWi-Fiでしか使えなかったアップル独自のテレビ電話「FaceTime」は、携帯電話のネットワーク経由でも利用できるようになった。使いやすさは格段にアップしたと言える。これまでFaceTimeを使ったことがなかった人も、これならちょっと使ってみようという気になるのではないだろうか。

リーディングリスト機能

 標準ブラウザ「Safari」に搭載されていた「リーディングリスト」も新しくなっている。リーディングリストは、「あとで読む」的な機能で、従来はURLだけを記録するブックマーク的な機能だったが、iOS 6ではWebページ自体のデータをiOSデバイス内に保存できるようになった。保存されたページは通信できない場所や機内モード中にも閲覧できる。リーディングリストはほかのiOS機器やMac(要Mountain Lion)のSafariとも同期するが、同期するのはURLだけで、Webページの自動ダウンロードはされないようだ。

 「Safari」でいうと、iCloud経由で開いているタブを同期させる機能が加わった。「Safari」内のiCloudボタンをタップすると、ほかのデバイスでタブを開いているWebページの一覧が見られる、というものだ。タブ同期できるのは、iOS 6の機器とMac(要Mountain Lion)だけで、これらを複数持っていないと意味がない機能だが、持っているとかなり便利な機能である。たとえば仕事中にトイレに駆け込んだとき、直前までパソコンで見ていたWebページをトイレに持ち込んだiPhoneで見る、というような使い方が可能だ。筆者はトイレに古いiPadを置きっ放しにしているが、このタブ同期の恩恵はきわめて大きそうだ。

おやすみモード機能

 通知関連では、「おやすみモード」という機能が加わった。これは指定した時間帯に着信音や通知音を鳴らなくするというもの。特定の人からの着信だけを受け付けたり、連続してかかってきたときだけ緊急の要件と見なして着信音を鳴らす、ということもできる。同様の機能はかつて国内のフィーチャーフォンでも搭載されていたりしたが、iPhoneも採用したのは嬉しい機能だ。

 通知関連では、緊急地震速報に加え、災害・避難情報にも対応したようで、au、ソフトバンクのiPhone 4Sともに、設定に表記が加わっている。ただし本当に鳴るかどうかは試せていない。まぁ、そうそう鳴って欲しくない機能ではある。ちなみにSIMフリー版iPhone 4SにドコモのSIMを挿入すると、この緊急地震速報の項目自体が消える。

 細かなところでは、「設定」に「プライバシー」という項目が追加された。これは、インストールされているアプリのうち、連絡先やカレンダー、リマインダー、写真、位置情報サービスといった共有データ・機能にアクセスするアプリについて、それらのデータ・機能へのアクセスを許可するかどうかをユーザーが選べるというものだ。スマホのセキュリティ対策やプライバシー保護が重要視される中、こういった機能の追加は重要だ。

App Storeのランキング画面

 「App Store」と「iTunes Store」は、見た目が大きく変わっており、iPhoneからだと、ランキングや検索結果が横に並ぶようになっている。こちらの方が便利な面もあるのかも知れないが、いままでの形式に慣れていたので、今のところ不便さを感じる。それから、どうやら一度ダウンロードしたことのあるアプリを再ダウンロードするときやアップデートするときは、Apple IDのパスワード入力が不要になったようだ。セキュリティ面を考慮すると不安なところもあるが、個人的にはありがたい変更である。

 また、YouTubeのアプリが標準アプリから姿を消した。代わりにApp Storeで、かつての標準アプリより高機能かつモダンな新YouTubeアプリがダウンロードできるので、必要に応じてそちらをダウンロードすれば良い。

iPadの[時計]アプリ

 このほかでは、iPadの標準アプリとして「時計」が加わった。世界時計、アラーム、ストップウォッチ、タイマーの4つの機能は、iPhoneの「時計」と同じだが、世界時計は設定した場所の天気も表示してくれるようになっている。

 「iOSのバージョンアップ」は、無料で提供されるし、アップデートの手順も簡単で、データが消えることもない。一方でいろいろな新機能追加があり、場合によっては新機種に買い換えたときよりも多くの新しいユーザー体験があったりする。また、アップデートの度にサードパーティ製アプリのためのAPIが増えるので、最新OSでないと全機能を使えないアプリというのも多い。よほどの理由がない限り、バージョンアップは行うべきだろう。

 しかし、今回のiOS 6を見ると、「マップ」アプリの変更が問題だ。個人的には、地図はわかりづらく、路線検索の手間は多くなってしまったので、残念ながら使いづらくなったと言わざるを得ない。もっとも、サードパーティによる別の地図アプリを使えば良い話なので、バージョンアップを控えるほどの“よほどの理由”にはならないのかもしれないが、現在「マップ」アプリを多用している人は、事前に代替に使える地図アプリを探しておいてから、iOS 6へのバージョンアップをする方がいいだろう。