「このPC、メモリ32GB積んでるよ」「え、少なくない?(笑)俺のiPhoneは128GBだよ」──先日、こんなやりとりがSNSで話題になった。これは「メインメモリ」(RAM)と、「保存領域」(ストレージ)を混同しているという単純明快な話だ。知識がある人にとっては、「おいおい、まじかよ……」とツッコミを入れたくなってしまう。
実は大手経済紙も同じような間違いを犯した過去がある。紙面に掲載されたソニーのゲーム機「プレイステーション 4」(PS4)と、任天堂の「Wii U」のスペック比較表で、PS4のメインメモリであるRAM 8GBと、Wii Uのストレージである32GBを同列に扱ってしまったのだ。
大手メディアでも間違えてしまう“メモリ”の話。そこで今回はRAMとROM、そしてストレージの違いについて紹介していこう。
RAM(ラム)とは「Random Access Memory」(ランダムアクセスメモリ)の略。CPUが何らかの処理を行ったり、画面上に何かしらのデータを表示したりするときに使う作業用のメインメモリ(主記憶装置)だ。RAMのデータは頻繁に書き換えられ、電源が切れると作業に使っていた一時データも消える。
分かりやすく言い換えるなら、RAMは机の広さと表現できる。メモリが多い(=机が広い)ほど、一度に多くのアプリを開けるというわけだ。
現在の一般的なPCが搭載するRAMは4〜16GB程度で、業務用途などで使われるハイエンドPCは32GB以上のRAMを搭載していることもある。一方、最近のスマートフォンやタブレットが搭載しているRAMは1〜4GB程度。6GBを搭載するハイスペックモデルも登場している。
OSによって必要なメモリ量は異なるため、PCとスマートフォンで単純比較できるものではない。ただ、一昔前のPCが搭載していたメモリ量を今の携帯端末が普通に搭載していることを考えると、ちょっとびっくりしてしまう。
ROM(ロム)とは、「Read Only Memory」(リードオンリーメモリ)の略。こちらはRead Onlyという名前の通り、書き込み不可・読み出しのみ可能なメモリを指す。例えばゲームソフトや音楽CDなどがこれにあたる。一昔前に「おーい、ファミコンのロムカセット貸してくれよー!」なんて言ったことのある人も多いはずだ。
ところが、国内で携帯電話などのサービスを提供する通信キャリアが公開しているスマートフォンのスペック表を見ると、なぜかデータを保存するストレージ容量を「ROM ○GB」として表記する慣習がある。2017年現在も大手3キャリアのスペック表を見ると、保存領域の容量をROMとして表現している。まるでRAMの対義語かのように。
日本のキャリアが公開しているスペック表。「RAM/ROM」という表記を使っている。ここで言う“ROM”は、ストレージ容量を表している海外キャリアが公開しているスペック表では、「内蔵メモリ」と表記しており、ROMの文字は見当たらない どうやらこの表現を使っているのは日本だけのようで、海外では「Internal Memory Storage」(内部メモリストレージ)としっかり表記しているほうが多い。米Appleの「iPhone」においては、日本でも「容量」と表現しているのはおなじみのこと。
このようにPC業界では保存領域のことをストレージなどと呼んでいるが、スマートフォン業界では書き換え可能な保存領域のことをROMと呼んでいるのだ。
ちなみに、一般的なPCのストレージ容量は、128GB〜2TB程度。スマートフォンやタブレットでは16〜128GBがほとんどだ。
冒頭にあるPCのメモリ32GBと、iPhoneのメモリ128GBは、そもそも言及しているメモリの種類が違うということがお分かり頂けただろうか。メモリにも色んな種類がある。
その一方で、最近発表された新技術がメモリの扱いを一変させようとしている。米Intelが5月に次世代のメモリとして発表したのが、「Intel persistent memory」というもの。
簡潔に説明すれば、「電源を落としてもデータが消えない大容量RAM」だ。つまり、これまでストレージに保存していたあらゆるデータを、高速に読み書きできるRAMにそのまま保存できるようになる。これまでの「データを保存しています……」という工程が不要になるのだ。
「このPC、メモリ32GB積んでるよ」「え、少なくない?(笑) 俺のiPhoneは128GBだよ」「私のメモリは2TBだ。ストレージはない」なんて未来がもうすぐやってくるかもしれないのだ。またメモリの表記戦争が起こるかも……。テクノロジーの進歩は楽しい。
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