海外プリペイドSIMを使うメリットと注意点:はじめての格安SIM&SIMフリースマホ 第11回 - ITmedia Mobile

沿って : Ilikephone / On : 05/04/2022

「はじめての格安SIM&SIMフリースマホ」バックナンバー

 第6回で紹介したように、MVNOを利用するだけなら、必ずしもスマホがSIMロックフリーである必要はない。ドコモのMVNOならドコモの、auのMVNOならauの端末があれば、それぞれのMVNOのSIMカードを認識する。

 とはいえ、特定のキャリアにひも付いていないSIMロックフリースマホなら、通信方式さえ合えばあとからSIMカードの会社だけを変えることができる。今は3Gの通信方式がドコモ、ソフトバンクがW-CDMA、auがCDMAと異なっており、SIMカードだけで購入できるソフトバンクのMVNOもないためメリットは少ないが、将来を見越してスマホをSIMロックフリーにしておくのは手だ。現時点でも、SIMロックフリースマホなら、例えばドコモのMVNOからソフトバンクに移ることも可能になる。

 それ以上にSIMロックフリースマホのメリットが効いてくるのが、海外渡航時。現地のプリペイドSIMカードを契約すれば、現地の通信料が適用されるからだ。日本ではマイナーだが、海外ではプリペイドも一般的な契約形態として認知されていることが多い。イギリスやマカオなど、国によっては、空港にSIMカードの自動販売機があり、お金を入れるだけですぐに入手できることもある。

海外のプリペイドSIMカード。端末のSIMカードスロットとサイズが合わない場合、店員がカットしてくれることも海外のキャリアは、プリペイドのSIMカードを扱っていることが一般的だ。パスポートなどの身分証明書の提示を求められることが多く、住所はホテルで代用できる(写真=左)。身分証明書不要で、自動販売機で手軽に購入できる国もある。写真はロンドンのヒースロー空港に設置されていたSIMカードの自動販売機。マカオにも同様の自動販売機がある(写真=右)

 ここまで手軽に入手できなくても、キャリアショップに行けば、ほとんどの国でSIMカードを購入できる。徐々にではあるが、高速通信方式のLTEを利用できるプリペイドプランを用意するキャリアも増えている。もちろん、ほかの海外での買い物と同様、簡単な英会話のスキルは必要になる。また、料金体系が国やキャリアによって大きく異なるため、事前に下調べしておいた方がいいだろう。

 国によって周波数が異なることも、注意しておきたいポイントだ。3Gであれば2GHz帯に対応している端末なら、たいていの国で利用できるが、アメリカなど一部特殊な周波数帯を採用している国ではそれに合わせた端末が必要になる。LTEについては3G以上に周波数の統一が取れていないため、利用の際にはいっそう注意したい。このような観点で見ると、日本で簡単に入手できるSIMロックフリー端末の中では、iPhone 5s/5cやNexus 5が比較的対応周波数が多く、使い勝手がいい。

海外プリペイドSIMを使うメリットと注意点:はじめての格安SIM&SIMフリースマホ 第11回 - ITmedia Mobile

iPhone 5sの対応周波数表。 http://store.apple.com/jp/buy-iphone/iphone5s から確認できる。これが合わないと通信できないので、渡航先のキャリアが使用する周波数と端末の周波数は、あらかじめ調べておきたい

 では、現地の料金は国際ローミングと比べてどの程度安いのか。一例として、筆者が最近訪れた台湾のキャリアの料金を紹介しよう。日本から台湾に行く際に、よく利用される空港は、台北にある桃園空港か松山空港だろう。前者には台湾3キャリアの、後者には中華電信のカウンターがあり、旅行者用のプリペイドSIMカードが販売されている。

台湾では、空港にキャリアのカウンターが設置されている。店員も手馴れており、順番がくれば5分もかからずSIMカードが発行される

 中華電信の場合、音声通話が利用な料金は、データ通信が使い放題で1日300元(約1019円、6月13日時点)。3日間、5日間でも同じ300元だが、含まれている無料通話分がやや少なくなる。これが7日間、10日間になると、料金は500元(約1698円)にアップする仕組みだ。日本で一般的になったデータ量の制限は今のところなく、数Gバイト使っても特に通信が止まるようなことはなかった。

中華電信のプリペイド向け料金。左が音声通話あり、右がデータ通信のみの料金プラン(写真=左)。台湾ではまだプリペイドだとLTEが利用できないが、それでも下りで7Mbps近い速度が出た。展示会のような混雑した場所に行くのでなければ、これで十分快適だ(写真=右)

 一方、同じ台湾で国際ローミングを利用すると、3キャリアとも1日あたり最大2980円の料金がかかる。“最大”という表記がクセモノだが、ここはわずか20万パケット(24.4Mバイト)使っただけで達してしまうため、自動で通信することも多いスマホだとほぼ毎日上限に達してしまう。仮に10日間滞在して、毎日使ったとすると、料金は2万9800円になる。台湾のケースだと、料金的に17倍以上の違いが出てしまうというわけだ。

海外パケット定額(日本のキャリア)と中華電信の料金比較(単位=円)
1日2日3日4日5日6日7日8日9日10日
海外パケット定額2980596089401万19201万49001万78802万860238402682029800
中華電信のプリペイド1019101910191019101916981698169816981698

 プリペイドSIMが安いのは、日本よりやや物価の安い台湾の特例かと思われるかもしれないが、それは間違い。日本とほぼ同水準かそれ以上の米国でも、T-Mobileは1日3ドル(約305円)で200Mバイトまでデータ通信が使えるプリペイドプランを提供している。欧州も国によってプランはまちまちだが、海外パケット定額より高い国はないと考えていいだろう。

 SIMロックフリー端末なら、プリペイドのSIMカードを挿して、現地の格安料金が適用される。設定は、第4回で紹介した方法をマスターしていれば、あまり問題はない。AndroidであればAPNのメニューを設定から開き、SIMカードの説明書などに記載されているAPNを手動で入力すればよい。

ネットワーク検索を行い、購入したプリペイドSIMのキャリアを選択。画面は中国本土の場合。中国では、W-CDMA方式を採用するのが中国聯通(チャイナユニコム)1社だけなので、ネットワークを検索してもW-CDMA端末だと1社しか表示されない設定からAPNの画面を開き、キャリアから教えてもらったAPNを入力する。SIMカードの説明書に記載されているケースが多いが、なければ店員に確認しよう

 Nexus 5のように、メジャーなキャリアのAPNがあらかじめ端末にセットされている端末もある。iPhoneの場合、同端末を取り扱っているキャリアなら設定不要で通信できる(ただし、海外MVNOの場合は第4回で紹介したように、APNの設定がかなり面倒なケースもあるので注意したい)。

Nexus 5では、SIMカードを挿しただけでAPNが設定された

 データ通信だけでなく、音声通話の料金も国際ローミングより安くなる。一緒に旅行している友だち、家族や、現地のレストランなどに電話する際には、非常に便利だ。

 メリットづくしに見える海外のプリペイドSIMだが、端末が1台しかないと、一般的には日本のSIMカードと海外のSIMカードのどちらか一方しか選べない。そのため、海外のSIMカードを挿しているときに、日本の電話番号に電話があっても気づけないということになる。日本の電話番号で発信したいときも、わざわざSIMカードを差し替えなければならない。

 これを回避するために、海外用のSIMロックフリー端末をもう1台買っておくのもいい。電話だけでよければ、数千円で売られている小型のフィーチャーフォンで十分だろう。日本のSIMカードをそちらに挿し、電話専用にするというわけだ。2台持ちが面倒なら、転送を活用して、「050 Plus」など電話番号が発行されるIP電話アプリに転送してもいい。

 年1回の短い海外旅行なら、貴重な時間を使ってまでSIMカードを買う必要はないかもしれないが、海外出張が多かったり、長期間旅行したりといったケースでは、SIMロックフリー端末が欠かせない。すぐに海外に行く予定がなくても、このようなメリットがあることは、頭の片隅に置いておきたい。

 なお、海外プリペイドSIMの情報については、各国での入手方法をまとめた連載「海外プリペイドSIM導入マニュアル」も参考にしてほしい。

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