一気に3カ所のV3スーパーチャージャーがオープン!
2021年5月以降、テスラが独自に整備している急速充電インフラである『スーパーチャージャー』で、『V3』と呼ばれる最大出力250kWの高出力器を備えた新スポットが続々と開設されています。
最近開設されたV3スーパーチャージャーは、以下の3カ所です。
伊賀スーパーチャージャー
設置基数:4基(V3)住所:三重県伊賀市西明寺2756-104(ヒルホテルサンピア伊賀)●テスラ公式サイト●EVsmart案内ページ
ホテル駐車場内に4基設置。隣接してプラグがJ1772規格で、ユアスタンド認証のウォールコネクター(普通充電器)も4台設置されています。
松戸スーパーチャージャー
設置基数:4基(V3)住所:千葉県松戸市八ケ崎2丁目8-1(テラスモール松戸)●テスラ公式サイト●EVsmart案内ページ
ショッピングモール駐車場内に4基設置。少し辿り着きにくい場所にあるようで、テスラ情報を発信しているテスカスさんのサイトに『テスラスーパーチャージャー松戸へのアクセス方法と注意点』という記事がありました。また、同じ施設の屋上駐車場内に無料(1回30分まで)で使えるチャデモ規格の急速充電器2台が設置されています。※冒頭写真はテスカスさんのウェブサイトから転載。
函館スーパーチャージャー
設置基数:4基(V3)住所:北海道函館市石川町85番1号(函館蔦屋書店)●テスラ公式サイト●EVsmart案内ページ
スタバやカルディ、ノースフェースなどのショップもある蔦屋書店の駐車場に4基設置。24時間営業のファミマもあるので、充電中の時間も過ごしやすいでしょう。北海道で初めてのスーパーチャージャーです。
スーパーチャージャーが教えてくれる急速充電の理想像
念のため、基礎知識を整理しておきます。スーパーチャージャーとは、テスラ車専用の急速充電設備です。プラグ形状などもチャデモ規格とは異なるので、充電できるのはテスラ車のみ。いうまでもなく、テスラが自社EVユーザーのために、独自に、世界中で設置を進めています。
今回紹介する3カ所がオープンしたことで、日本国内に開設済みのスーパーチャージャーは31カ所となりました。テスラの公式サイトでは、さらに「Daikanyama」「Kanazawa」「Kobe」など9カ所が「coming soon」となっています。代官山スーパーチャージャーも高出力のV3が4基で、まもなくオープンという噂です。
また、「coming soon」にはリストアップされないまま、突然開設される例もあります。いずれにしても、大幅値下げを実現して販売好調なモデル3の広がりとともに、日本国内でもテスラのスーパーチャージャー網が着々と充実しつつあるのは間違いありません。
テスラスーパーチャージャーには、チャデモ規格の公共充電インフラが範とすべきいくつかの特徴があります。まだあまり電気自動車や充電に詳しくない方のために、改めて確認しておきましょう。
日本国内のチャデモ急速充電スポットに設置されているのはほとんどが1台のみ。都市圏の高速道路サービスエリアなど数カ所に2〜3台設置されているところはありますが、複数台設置の急速充電スポットが「どんどん増える」状況にはありません。
でも、スーパーチャージャーは世界中で複数台設置がデフォルトになっており、日本国内でも東京・六本木のグランドハイアット東京駐車場と、神奈川県藤沢市のテラスモール湘南駐車場が2基、丸の内のパレスホテル東京がバレーサービスによる充電となっているほかは、4〜8基のスーパーチャージャーが設置されています。
チャデモの公共急速充電器は、原則として充電時間は1回30分以内というルールがあります。でも、テスラスーパーチャージャーにそんな制限時間はありません。
逆に、満充電になって充電が停止しているのにプラグを外さず、充電スペースにクルマを停めたままにしていると、1分ごとに50円、スーパーチャージャーが満車時には1分ごとに100円の超過料金が課せられます。
チャデモの急速充電器はおおむね最大50kWで整備されてきました。高速道路上の施設でも40kW器や44kW器が多く、一般道沿いの施設では20kWや30kWといった、いわゆる「中速充電器」も少なくありません。
テスラスーパーチャージャーは、もっとも多いタイプの充電器の公称出力が最大120kW。アーバンタイプという小型の充電器でも最大72kWの出力です。そして、今回の3カ所に設置された「V3」は最大250kWという高出力で充電することができます。
ただし、いかにテスラ車でも常に最大出力で急速充電できるわけではありません。また、250kWの充電に対応しているのはモデル3(モデルYは日本未導入なので)だけ。とはいえ、70kWや100kW超のスピードで充電できるのは、大容量電池を搭載した電気自動車にとっては大きな利便です。スーパーチャージャーに制限時間はないと紹介しましたが、実用的には30分もあれば大抵のケースでSOC(電池残量)80%以上までスムーズに充電することができます。
チャデモの場合、最大50kWといっても常に最大出力は出ないので、おおむね30分で充電できるのは20kWh程度。いかに大容量電池を搭載したEVであっても電費が5km/kWhとして100km走行する分の電力しか充電することができません。これが、最大120kWのスーパーチャージャーで30分充電した場合、フル出力の70%程度と見積もっても「120kWh×30分×70%=42kWh」、5km/kWhとして210km走行分を充電できます。
日本の公共充電インフラを利用する際には、eMPネットワークでの認証&課金が一般的です。充電する際には、各自動車メーカーなどが発行するeMPネットワークと連携した充電カードを、認証器にかざすなどして認証してから充電をスタートします。また、この方法などが充電器によって異なるなど「なんだか面倒」であるのが現状です。
テスラの場合、全てのテスラ車はオンラインで繋がっていて、スーパーチャージャーで充電する際にはプラグを挿せば充電開始。いわゆる「プラグアンドチャージ(PnC)」で認証と課金が行われ、事前に登録したクレジットカードで精算されます。しかも、ケーブルやプラグが軽くて扱いが容易。テスラ車の充電ポート位置が統一されているので、ケーブルが短くて施設の見た目もスマートです。
そろそろ、日本の仕組みも進化してほしい
「最大50kW」や「1回30分」といった日本流の充電スタイルが定められ、広がったのは2010年代初頭のこと。当時、世界の先駆けとなって市販された日産リーフや三菱i-MiEV、なかでも販売台数が多かった電池容量24kWhの日産リーフを基準に策定されたルールということができます。そもそも、満充電で24kWhですから、50kWで30分も充電すれば問題なく80%以上まで充電できていたのです。普及台数も多くはなかったので、1カ所に1台でさほどの問題は起こりませんでした。
でも、電気自動車の車種は増え、電池容量も大きくなりました。テスラスーパーチャージャーを知るほどに、日本の急速充電インフラの足りないところが浮かび上がって見えるのは、なんとも切ない現状です。
日本の公共充電インフラ構築をNCSから引き継いだe-Mobility Powerや、新たにアリアを発売する日産からは、高出力&複数台の急速充電インフラ整備を進めるという「意欲」が表明されていますが、なかなか、具体的なスポット新設や増設のニュースは伝わってきません。
そもそも、充電インフラの性能や使いやすさは、電気自動車の性能の一部と考えることができます。だからこそ、テスラは自社でスーパーチャージャー網を整備しています。ここ数年の日本の現状を見ていると、「日本の充電インフラが進化しないのは日産が孤軍奮闘だから?」とか「トヨタが本気になってくれなきゃ変わらない?」といった諦観に包まれたり、「もう、おいらもテスラがいいや」といった気持ちになってしまいそうです。
スーパーチャージャーが一挙に3カ所開設! のニュースをお伝えしつつ、日本のチャデモ急速充電インフラの進化を祈りたいと思います。
(文/寄本 好則)