5Gのインフラ整備の進展に伴い、商用モバイル・ネットワークの仮想化の動きが加速してきた。日本では、新規参入の楽天モバイルが5G/4Gのコア・ネットワークを仮想化ベースで整備し、現在、SA(StandAlone)方式の導入に向けv5GC(仮想化5Gコア)の構築を進めている。その基盤となるのが、クラウド技術をフルに活用した「Rakuten Communications Platform(RCP)」で、同社はコア・ネットワークだけでなく基地局設備(RAN:無線アクセス・ネットワーク)を含むネットワーク全体の仮想化を推進している。商用RANの仮想化に着手した通信事業者も出てきた。先陣を切ったのが米国の大手通信事業者ベライゾン。昨年RANを含む5G網全体の仮想化実験に成功し、商用展開に乗り出した。英ボーダフォンも大規模な仮想化RAN(vRAN)設備の構築を進めている。これらのプロジェクトをパートナーとして支援、モバイル・ネットワークの仮想化の実現に貢献してきたのが、インテルである。クラウド・通信事業者の声を半導体製品に反映CPUトップのインテルは近年、製品ラインナップをFPGAやGPU、ASICなどにも拡大、多様な“XPU”製品を活かして、新たな市場の開拓に挑んでおり、5Gも最重要の注力分野の1つである。通信インフラの仮想ネットワークへの移行は半導体ベンダーにとって大きなビジネスチャンスだ。そこでインテルは、仮想化に取り組む通信事業者を直接支援し、早期の商用展開を実現しようとしている。日本の4キャリアをはじめ、世界の多くの通信事業者が協業相手として名を連ねる。インテルでは、通信事業者とともに実証実験などに取り組むと同時に、その声を製品・ソリューションの開発に反映させている。では、インテルは5G向けにどのような製品・ソリューションを展開しているのだろうか─。仮想ネットワーク機能の中心を担う汎用サーバー向けCPUについては、第3世代インテル(R)Xeon(R)スケーラブル・プロセッサー(以下Xeon SP)を今年4月に発表した。第3世代Xeon SPの大きな特徴の1つは、8~40コアまで40種以上の製品(SKU)をラインナップし、データセンターからエッジまで多様な用途で活用できることだ。インテルでクラウド・通信事業者向けビジネスを統括する新規事業推進本部 クラウド・通信事業統括部長の堀田賢人氏によると、「そのうち品番の末尾にNを付した4つの製品は通信事業者から寄せられる『こういう機能を持ったCPUが欲しい』という声をもとに開発されたもの」だ。
インテル 新規事業推進本部 クラウド・通信事業統括部長 堀田賢人氏
例えば5G vRANに最適化された「6338N」は大量のデータ処理を行っている時でも、一部のコアはその影響を受けず安定した動作が期待できる。さらにインテルは、通信事業者のMECサービスやvRANなどでの利用を想定したエッジ向けCPU「インテル(R)Xeon(R)Dプロセッサー」の開発を、2021年中を目途に進めている。インテルでは「データセンターで使われるXeon SP、基地局サイトなどでも使いやすいインテル(R)Xeon(R)Dプロセッサーに、ローカル/プライベート5Gなどで手軽に使えるIntel Atom(R)プロセッサーを加えた3つのCPUシリーズで、通信事業者の幅広いニーズに応えていく」(堀田氏)考えだ。