韓国MZ世代が「メタバース」への流入を加速させる
韓国のエンジニアであるショーン氏
韓国のエンジニアであるショーン氏は、最近数百万ウォン(数十万円)で購入した土地を長期的な収益源とするために開発するという大きな計画を持っている。この30歳の投資家はロイターに対し「K-POPのライブや韓国ドラマの上映に適した建物を設計するつもりです。2、3年後には収益性の高いビジネスモデルになるでしょう」と語った。コロナウイルスのパンデミックによる労働力不足やコスト増加の影響で、彼の建設が妨げられることはない。なぜならショーン氏の壮大なプロジェクトは、すべてブロックチェーンベースの仮想世界「Decentraland」の中にあるからだ。メタバースは、世界の大半の国の人々にとっては未来の話かもしれないが、韓国では徐々に現実味を帯びてきている。住宅価格の高騰と所得格差が韓国で広がるにつれ、MZ世代と呼ばれる人々が現実の代替となる仮想世界に誘い込まれている。彼らのデジタルアバターは、ゲームや友達との散歩やパーティーなどを楽しむ傍らで、仮想世界の上に都市を構築し、収益性の高いビジネスを展開することを目論んでいる。ショーン氏もDecentralandに魅了された一人であり、この3年間で徐々にこのプラットフォームにのめり込んでいった。Decentralandのユーザーは、仮想世界で土地を購入し、入場料を課すナイトクラブなどのような実際のビジネスを展開することができる。現実の世界と同じように、ビジネスやその周辺のコミュニティが成功すれば、その土地の価値も上がる。ショーン氏のような一般ユーザーのみならず、投資顧問会社や通信会社、さらには韓国政府までもが、この仮想世界に参入している。サムスン・アセット・マネジメント(Samsung Asset Management)は、サムスン・グローバル・メタバース・ファンド(Samsung Global Metaverse Fund)を6月下旬に立ち上げた。このファンドには毎日10~20億ウォン程度の資金が流入し、2021年末までに1,000億ウォン(約95億円)の資金を集めるという目標を容易に達成すると見込まれている。サムスン・アセット・マネジメントの副社長であるチェ・ビョングン氏は、パンデミック以降、人々が遠隔地で仕事をするようになり、メタバースへの関心が高まったと述べている。サムスンのメタバースファンドが発売されたのは、KB・アセット・マネジメント(KB Asset Management)によるKB・グローバル・メタバース・エコノミー・ファンド(KB Global Metaverse Economy Fund)の発売からわずか2週間後のことだった。チェ氏は「Facebookのような世界的な大手ハイテク企業がビジネスの方向性をメタバースにシフトさせているため、この業界に資金が集まっています」と述べている。韓国最大の携帯電話会社であるSKテレコムは、7月にメタバース「ifland」を開設した。このサイトでは、ユーザーが他のアバターとミーティングを開いたり、他のミーティングに参加したりすることができる。SKテレコムの関係者はロイターに対し、「パンデミックの影響で非対面が社会のトレンドになったことで、(メタバースサービスへの)需要が急増しました。毎日何千ものルームが作られ、毎日何万人ものユーザーが参加しています」と述べている。SKテレコムは、韓国政府が5月中旬に立ち上げた「メタバース・アライアンス」の一員である。このメタバース・アライアンスには200以上の企業や機関が参加している。韓国の国家行政機関の一つである科学技術情報通信部の関係者はロイターに対し「政府はメタバース産業において主導的な役割を果たしたいと考えています」と述べている。また韓国政府は先週発表した2022年の604兆4,000億ウォン(約57兆円)の予算の中で、デジタルトランスフォーメーションの加速とメタバースのような新産業の育成に9兆3,000億ウォン(約9,000億円)を計上している。
次ページは:MZ世代とは?
1/3ページ
最終更新:あたらしい経済