Apple SIMが業界に与える影響は?:SIM通 - ITmedia Mobile

沿って : Ilikephone / On : 19/07/2022

10月から発売されているiPadの新製品、iPad Air 2とiPad mini 3。一見すると前モデルのマイナーアップグレード版と思われかねないスペック変更ですが、実は米国と英国で発売されているセルラー対応モデルには「Apple SIM」と呼ばれる、特殊なSIMが付属します。

 「ユーザーによるキャリアの選択にもAppleが介入するのか?」とも一時期騒がれたこのApple SIM。果たしてAppleの狙いはどこにあるのでしょうか。今一度情報を整理し、考察してみたいと思います。

 通常のSIMカードには電話番号だけでなく、利用可能なネットワーク(ドコモ、au、米AT&Tなど)の情報が書き込まれています。また、各キャリアに対応したSIMカードは、それぞれのキャリアから入手するのが普通です。これらの情報は書き換わることはなく、例えばSIMフリーiPadを持っているユーザーがドコモでSIMカードを入手後、ソフトバンクの回線に切り替えたくなった場合は、ソフトバンクショップで新たにSIMカードを入手する必要があります。

 ところが、Apple SIMを使うと、お店に行かずともユーザーが好きなタイミングでキャリアを自由にスイッチ出来るのです。いわば「乗り換え自由なSIMカード」です。

※現時点日本国内のキャリアには未対応です

 現状このApple SIMは、米国と英国で発売されているセルラー対応iPad(Touch ID搭載モデル)にのみ付属します。ただ、後述しますが米国内であってもキャリアショップで購入した場合は条件が変わってきます。英米のAppleストア(オンライン・オフライン)で該当モデルを購入した場合はもれなくApple SIMが付いてきます。また、Apple SIMカードキットは、英米のAppleストアで別途購入することもできます。

 さて、このApple SIMの刺さったiPadを起動し、設定アプリから「モバイルデータ通信」を選択すると、以下のようにキャリア選択画面が表示されます。

※画面はApple.comより

 ユーザーはキャリアショップに行かずとも、ここから好きなキャリアとプランを選ぶことが出来ます。例えば普段はWi-Fiのみで運用し、出張先で一週間だけT-Mobileを契約し、英国に旅行に行った際は現地キャリアのEEをこれまた一週間だけ契約、といった柔軟な運用が、ショップに行くことなく、1枚のSIMで可能になるのです。

 Appleのプロダクトマーケティング担当上級副社長であるGreg Joswiak氏が、米国ITメディアRe/codeのインタビューでApple SIMをiPhoneで利用する予定はないのかと聞かれ、以下のように答えています。

 この回答を額面通り受け取るのであれば、あくまでユーザーの利便性のためにApple SIMを導入したと言えそうです。

 また、3年前のデータになりますが、米国内で販売されたタブレットの90%はWi-Fiオンリーモデルだったそうです。電話機能があるため常時接続が必須の携帯電話と異なり、利用するときだけ繋がれば良いタブレットではWi-Fi運用でも問題が無いと考えられている事が分かります。

 そんな中、非常にフレキシブルに携帯回線を契約できるApple SIMの存在は、キャリアにとってもメリットがあると言えます。

Apple SIMが業界に与える影響は?:SIM通 - ITmedia Mobile

 とは言え、全く新しい試みであるApple SIM。米国キャリアの受け取り方にも温度差があるようです。

 日本の場合は3大キャリアですが、米国は4大キャリアがあり、シェアの大きい順に

  1. ベライゾン
  2. AT&T
  3. スプリント
  4. T-Mobile

 となっています。

 このうち、Apple SIMが対応するのはAT&T、スプリント、T-Mobileで、1位のベライゾンはApple SIMに賛同していません。

 また、理想としてはこの3社間で自由に行き来が出来るべきなのですが、実際は以下のような制限があります。

 また、キャリアショップからiPadを購入した場合、更に複雑になります。

 完全にApple側の要望を呑んだのはシェア4位のT-Mobileだけと言えます。

 Appleのねらいを良い方に考えれば、柔軟なキャリア変更を提供することで1割しか売れていないセルラーモデルの販売比率を上げ、短期であってもキャリアのプランを利用してもらうことでキャリアの売上げにも貢献していると言えます。

 その一方、キャリアとしては更なる価格競争にさらされる恐れがありますし、Appleによる今以上のコントロールから逃れたいという思いもあるでしょう。

 現状はこういった各社の主張が入り交じり、非常にややこしい仕組みとなってしまっています。

 目下試行錯誤中と言えるApple SIM。今後の展開はまだ読めませんが、3大キャリアで料金横並びとなってしまった日本でこそ、望まれる技術なのかも知れません。

 また、Apple SIMと直接の関係はありませんが、12月10日現在、SIMフリー版iPhone 6/Plusの販売が停止しています。他の国では販売継続しており、日本だけの模様。オンラインショップだけでなく、Apple Store銀座などの実店舗でも購入できなくなっています。

 この理由は明らかになっていませんが、急激な円安の影響が噂されています。

 気になったので、10日のレートでどれくらい他国での価格と差があるのか比較してみました(Appleオンラインストアでの価格、全て税抜)。

 まずは最も低価格なiPhone 6の16GBモデル。

 アメリカイギリスドイツ中国日本
現地価格 649ドル539ポンド699ユーロ5,288元 75,800円
対ドル為替レート 0.63863 0.80972 6.13127 119.96
ドル換算した価格 649ドル844ドル863ドル862ドル632ドル
米国価格との差額 195ドル214ドル213ドル(17ドル)

 次に最も高価なiPhone 6 Plusの128GBモデル。

 アメリカイギリスドイツ中国日本
現地価格 949ドル789ポンド999ユーロ7,788元 111,800円
対ドル為替レート - 0.63863 0.80972 6.13127 119.96
ドル換算した価格 949ドル1,235ドル1,234ドル1,270ドル932ドル
米国価格との差額 - 286ドル285ドル321ドル(17ドル)

 なんと!他国では200〜300ドルも高価なのに比べ、日本では米国より安い、という事が分かりました。日本のユーザーとしては嬉しいですが、あまりにアンバランスなのも事実。

 Appleはこれまでも為替の変動を吸収するため値下げや値上げを行っており、販売価格の変更は珍しいことではありません。ただ今回は「販売停止」であり、価格決定に時間がかかっているのか、円高になるまで待つつもりなのか、もしくは全く別の理由なのか、いつ再開されるのか、謎は尽きません・・・

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