昨年12月末に「怪しいショートメッセージ(SMS)が届きました」との連絡を受けました。
その内容をみると「【ご当選確認お願い致します】新生活の味方に応援懸賞キャンペーン開催中♪」とあります。
ネットで、このSMSを調べてみると、多くの人のところに届いていることがわかりました。そこには「詐欺につながる」といった注意喚起はあります。しかし具体的にこの先にどのような危険が待ち受けているのか、それに関する記述は見受けられません。
さらに調べると、文面は若干違いますが、1年以上前から同じような「新生活の応援」を謳うSMSは届いているようです。
当選メッセージの行きつく先を、調べてみる必要がありそうです。
というのも、このところ「当選しました」のメール、メッセージを受けってからの高額な被害が出ているからです。
2021年10月、山口県に住む50代男性はスマホに届いた「3億円を送金する」のメールが届いたことをきっかけに、約400万円の電子マネーを騙しし取られています。
また、北海道に住む50代男性も「55億円を支援します」というメールをきっかけに、21年12月に被害に気づくまで、2年間にわたり、約350回も電子マネーを購入して1600万円の被害に遭っています。
なぜ、騙されるのだろうか?そう思われる方もいるかもしれません。
この辺りの事情を解明する必要がありそうです。
届いたSMS「【ご当選確認お願い致します】」の下には「今すぐプレゼント内容の当選確認」とあり、「090********」から始まる電話番号載っています。
この番号に電話をかけるように促していますので、さっそくかけてみます。
女性の声で「確認が完了しました。ご登録ありがとうございました」という自動音声ガイダンスが流れます。
そこで「もしもし、もしもし」と筆者は話しかけますが、返答はありません。
ほどなくして、一方的に電話が切れてしまいました。
どうやら、こちらの電話番号を把握することが目的のようです。
机の上にスマホを置いて、じっと待っていましたが、1時間、2時間たっても「当選した」という電話連絡はありません。
何度もSMSを確認しましたが、何も届きません。こちらの電話番号を取得して、後に悪用する。それだけが目的だったのでしょうか。
翌日の大晦日、朝早く起きて受信ボックスを見ると、メッセージが届いています。
「***********様でお間違いありませんか?」
11桁の私の電話番号が載っています。
その差出人をみると「V**B**」なる人物からです。
その下には、URLが載っていますので、タップしてみました。
すると「吉沢」なる人物からの「大切なお知らせです」が表示されました。
「政府機関の調査にて、医療、年金、金融機関等の情報提供からあなた様【***********】が救済対象として選ばれました。生活福祉金として5億円の無料振込を行わせて頂きます」
なんと「5億円がもらえる」というのです。生活福祉金とは何なのか?説明文がありました。
要約すると「国民の皆様を救済することを目的として、内閣府特命担当大臣を筆頭に厚生労働省を交え、数年前から実施された国民救済制度」だそうで、「全国民の皆様を一同に救済することはできませんが、毎月、数名~十数名の方々を順々に政府機関の規定規約に則り選出し、生活福祉金をお振込させて頂いている」とのことです。
どうやら、その5億円の生活福祉金を受け取れる救済制度の対象に、筆者が選ばれたようです。
そこには、お金を受け取った人たちの喜びのメッセージもあります。
ある男性は「私の幸せを分けてあげたいと思って、お話します。生活福祉金は本当に受け取れます」といい、別な女性は「5億円の無料振込、吉沢さんが叶えてくれました。生活福祉金が振込されて毎日が全然違う日々に変わりました。本当にありがとうございます」と書き込んでいます。
このお金を受け取るためには、「【5億円振込実行】のボタンを押して下さい」とありますので、押してみます。
すると、応募フォームのような画面が出てきたので、「よろしくお願いします」との文章を記載して、「メールを送信する」のボタンを押しました。
まもなくして、吉沢なる人物から「下記より進んでご対応下さい」とのSMSが届きましたので、URLをタップします。
すると、5億円の受け取り方法が載っています。
「銀行法施行令の規定に基づき、無料振込を行う為に口座登録を行う事が必要ですので、一度のみ口座登録費用として【3,000】円をコチラからチャージして下さい」
支払い方法をみると、クレジットカードか、コンビニで3,000円分の電子マネー買い、そのカードの裏に載るプリペイド番号をサイトに入力するように指示されています。
ここで、当選メッセージの目的がはっきりしました。
電話でお金の支払いを迫るのではなく、SMSのやり取りを通じて、口座登録費用の名目で、お金を騙し取ろうとするのが目的だったのです。
もし3,000円を払っても、5億円を受け取れることはありません。繰り返し手数料を要求されて、被害金額が大きく膨らむようになっています。
というのも、この手口は出会い系サイト、サクラサイト詐欺といういわれるものです。
過去には、芸能人を騙り、有料のメールのやりとりを数多くさせて、多額のお金を取る被害が出ました。そして今も、有名女優や男性アイドルを騙り、メールのやりとりをさせてお金を騙し取る被害は絶えません。
このサクラサイト詐欺では、芸能人ではなく、国の機関を装った人物と、メールのやり取りをさせながら、手数料名目に電子マネーでお金をだまし取る手口でした。
そして、私がやりとりしたサイトを調べると、「V**B**」の名称で、ベトナムに住所を置く業者でした。つまり、SMSの差出し先はこのサクラサイトの業者名だったわけです。
これは、コロナ禍で生活に困り、世の中も給付金が支給されるなどしている状況に付けこんだ手口といえます。
生活福祉金に似た名称の「生活福祉資金貸付制度」は、厚生労働省にて行っているもので、また「銀行法施行令」も実際にある法律です。
こうした名称をうまく使いながら、騙そうとしていることがよくわかります。
だいぶ、「当選」のSMSの手口は見えてきましたが、根本問題はまだ解決していません。
なぜ、この手法で50代以降の中高年が、繰り返しお金を払ってしまうのか?という点です。
それについては、SMS(下)にて、さらに届けられるSMSのURLをタップして進み、その理由を解き明かします。
そこからは「期待」と「不安」を煽る手口で騙す手法が見えています。
【(下)へと、続きます】
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