【やじうまミニレビュー】意外にもフルHDパネル2枚分より便利。32:9液晶「Innocn WR44-PLUS」を試してみた - PC Watch

沿って : Ilikephone / On : 29/03/2022

WR44-PLUS

 新興ディスプレイメーカーInnocnの「WR44-PLUS」は、3,840×1,080ドットというやや変わった解像度の表示に対応した43.8型ウルトラワイド液晶ディスプレイだ。Amazonでの価格は8万5,990円となっている。なお、27日現在はブラックフライデーで価格は6万193円だ。

 世の中にはさまざまな解像度やアスペクト比の液晶が存在するが、一般的なのは16:9であり、解像度としては1,920×1,080ドット(フルHD)、2,560×1,440ドット(WQHD)、3,840×2,160ドット(4K)の3種類がメジャーである。このうちフルHDはほぼディスプレイのスタンダードと言ってよく、より高精細なビデオコンテンツを楽しむなら4Kの方が適していると言える。

 一方でWQHDは、ビデオコンテンツのフォーマットとして採用されている例は少ないのだが、精細さと情報量を両立しやすい解像度であり、ハイエンドGPUと組み合わせた際に、無理なく最新の3Dゲームタイトルをプレイできるものとして人気がある。近年はGPU性能が向上していて、リフレッシュレートも144/165Hz対応品がメジャーとなっているため、選択肢が豊富になってきた。

 数字で見ると、WQHDは確かにフルHDと4Kの間に位置するのだが、画素数に換算してみると、フルHDが2,073,600ピクセル、WQHDが3,686,400ピクセル、4Kが8,294,400ピクセルとなっており、意外にもWQHDは4Kの半分よりも460,800ピクセル分情報量が少ないことがわかる。よって、「4Kは(一般的な27型や31.5型では)視認性が悪く、WQHDでは情報量がちょっと足りないので、フルHDディスプレイを2枚並べて作業している」というユーザーも少なからずいることだろう。

 実際、筆者もWQHDの27型を愛用しているのだが、Webブラウザの情報を参考にしながら執筆をするといった単純な作業でも、ウィンドウの一部がオーバーラップしてしまうため、ウィンドウの切り替えは発生してしまう。もう1台横にディスプレイを並べればいいのだが、結局「左をメインにするのか、右をメインにするのか」で、座る向きと姿勢が異なり、もう片方見るためには首を伸ばす羽目になるので、片方しか使わなくなってしまった。

筆者の普段の環境。デルのWQHD対応27型ディスプレイ「S2721DGF」がメイン。横にフルHDの「LCD-GC221HXB」も置いているが、別のPCを同時起動しておくという時以外、使う機会はない

 そういう意味で、WR44-PLUSはまさに「デュアルデュアルディスプレイのニーズを満たしつつ、不満を解消する」モデルだと言える。フルHDパネルを横に2枚並べた以上に便利に扱えるのだ。

 なぜかと言えば、解像度こそフルHDパネル2台分だが、その間のベゼルがないので、ベゼルをまたぐ「中央」での表示も継ぎ目がなくシームレスだからだ。「どちらかがメイン」ではなく、あくまでも中央がメインで、残りを脇役にできる。常に正面を向いて作業しつつ、参照したい情報を脇に置く、不要だから脇にどかしておくことが可能。感覚としてはデュアルディスプレイというより、ちょっと狭いトリプルディスプレイなのである。この感覚はなかなか新しい。

解像度で言えば純粋にフルHDパネル2枚分だが、「中央」にウィンドウを置けるのが最大の強み

 ちなみにHDMIの1系統目とDisplayPort接続では最大120Hzで表示ができる。AMD FreeSync対応のほか、ゲーム向けの画質モードも用意されている。背面にはRGB LEDによるイルミネーションのストライプも備わっており、ゲーム用としても悪くない。残像も比較的抑えられており見やすかった。なお、HDMIの2系統目は68Hzが上限だった。

 ほかに製品の外観や機能面について簡単に触れておこう。本機はさすが32:9ということもあり、パッケージは1mを超えるため、購入時はある程度覚悟が必要。ただ、ディスプレイ2台分のスタンドを1つにまとめている上にベゼル、1台分に相当する左右のベゼルもないので意外にも机に置きやすい。

 筆者は横幅が90cmしかないエレコムの「LPG-90H」という製品を利用している。さすがに画面左右はデスクからはみ出したものの、スタンド自体は難なく収まったため設置できた。

 製品パッケージには本体とスタンド、取り付け用のネジ、ACケーブルのほかに、DisplayPortケーブル、USB Hub用ケーブル、USB Type-Cケーブル、リモコン、壁がけ用VESAマウンタ、ドライバなどが付属している。また、キャリブレーション証明シートや日本語マニュアル、クリーニングクロス、指紋防止用の手袋なども付属していて、至れり尽くせりな印象を受ける。

 本体背面は湾曲を彷彿とさせるデザインだが、実際は湾曲していない。当然、画面の左右両端へから目の距離は遠くなり、角度が生じたことにより若干暗くなる印象もあるのだが、画面から50cm離れて見れば、湾曲していなくてもギリギリセーフかなといったところだ。

 添付のキャリブレーションシートを見ると、sRGB色域において最大色差ΔEが1、平均が0.44となっていた。かなり優秀な部類だ。実際に見ていても気持ちがいい画質だと感じた。

製品パッケージは余裕の1m超えなので、くれぐれも注意製品は発泡スチロールで厳重に包まれている背面のスタンド接合部スタンドはがっしりとした金属製。スイベル、チルト、昇降に対応インターフェイスはDisplayPort、HDMI×2、USB Type-C付属品は豊富

 OSDの設定はボタンで行なうオーソドックスなものだが、ゲーム向けにクロスヘアやリフレッシュレートを表示する機能も備わっている。やや変わっているのはピクチャーインピクチャー(PIP)およびピクチャーバイピクチャー(PBP)の設定で、2系統目の入力先の制限はない(1系統だけでPIPまたはPBPも可能)。PBPでも3,840×1,080ドットのまま入力されてしまうので、そのままだと画像が縦長になってしまう。そのため機器側でフルHDに設定しておくといった工夫が必要となる。

OSDのトップはゲーム向けの設定となっている画質設定などPIP/PBP設定サブ信号のソースはなぜかメイン信号と同じものが選べるPBP表示で同じソースを表示することも可能。誰得なのは確かだが……できることはできるPIP表示でほかのPCの画面を映し出したところ

 また、本体背面にはRGB LEDイルミネーションのストライプが備わっているが、この設定もOSDから行なう。標準では7色がグラデーションで流れるように変化していくものだが、単色発光や点滅といった発光パターンも選択可能であった。ちなみに本機はスピーカーも内蔵されているが、完全に「鳴る」だけで、音質については残念なレベルだった。

 入力端子はDisplayPortとHDMIのほかに、USB Type-Cを搭載している。このUSB Type-Cは65WのUSB PD給電も可能なので、ノートPCとの接続にも便利である。

 加えて、4ポートのUSB Hubも内蔵。USB Type-Cともう1つのUSBアップストリームによる、KVM機能も備わっており、ノートPCとデスクトップPCの2台で使う際の切り替えに便利だろう。

3ポートのUSB Hubも内蔵し、KVMとして機能するUSB Type-Cケーブル1本で充電も映像転送も可能なので、ノートPCでも便利

 1週間ほど試用してみたが、32:9はディスプレイの新しい選択肢としては悪くないとは思った。さすがにWQHDと比較すると縦の解像度が狭いので、「うーんもうちょっと下が見えればなぁ」と思えたこともあるのだが、ワンランク上の5,120×1,440ドットの製品は値段が2倍に跳ね上がるので、贅沢を言わなければ十分だ。ただ、一般作業だけでなくゲームも視野に入れるなら、GPUの相対負荷が低い本製品は良い選択肢になるだろう。