【甘利明自民党幹事長(当時)の発言】
甘利明氏のファクトチェック、結果は
「世界を席巻しているスマホも3Dプリンターも量子コンピューターも全部、日本の発明です」(2021年10月17日のNHK「日曜討論」)【表】ファクトチェックの判定基準
【判定】スマホ 「判定留保」
甘利氏が「日本の発明」と話した製品や技術を、それぞれみていく。 まずはスマホ(スマートフォン)から。 甘利氏は「世界を席巻しているスマホ」は日本の発明と述べた。この発言の直後、ネット上では「誤りではないか」と疑問視する意見が出ていた。 モバイル研究家で青森公立大で准教授を務めたこともある木暮祐一さんによると、現在、世界で日常的に使われているスマホのもとをたどると三つの流れがあるという。 ひとつは、持ち運びできる個人向けの情報端末だ。PDA(パーソナル・デジタル・アシスタント)と呼ばれ、性能のいい電子手帳のようなものだった。そこに通信や通話の機能が加わっていった。 もう一つは、ポケベル(ページャー)が進化し、画面やキーボードを充実させ、通話もできるようにしたもの。さらに、携帯電話から発展し、インターネットにつなげるようになったものがある、という。 その上で、スマホの要件について、ネットに接続されていることに加え、ユーザーが自由にアプリを追加でき、タッチパネルで操作しやすいことを挙げる。木暮さんは、これらを満たすのは、2007年に米アップルが発売した「iPhone以降」と話す。 この番組での甘利氏の発言に関しては、証拠・根拠がないか非常に乏しいため「根拠不明」と言えそうだ。 しかし、甘利氏はその後の選挙演説などで、この発言の根拠として、NTTドコモが1999年にサービスを始めた「iモード」に言及する。「世界で最初に携帯電話とインターネットをつなげたんです。これが革命です。そのフルスペック版がスマホに過ぎないわけです」と述べている。 この発言について、NTTドコモ広報部は朝日新聞の取材に「iモードは携帯電話端末によるインターネット接続サービスとして、世界で初めてサービス提供を開始した」と認めた。ただ、iモードが現在のスマホにつながる発明かどうかについては「スマホのプラットフォーム(動作基盤)の開発サイドでないのでお答えする立場にない」と答えた。 ドコモでiモードを開発した中心人物の一人、夏野剛・KADOKAWA社長は、スマホの技術的な源流はiモードにあるとの見解を示す。甘利氏の発言について「間違っていない」と話す。 情報ネットワークに詳しい慶応大学の村井純教授は「一般的には今のスマホの起源はiPhoneだが、その前にブラックベリーなどの中間的な端末もある」と指摘。「こうしたものを含めてスマホと呼ぶとすれば、(甘利氏の発言は)全体的には正しい」と話す。 一方で、「iPhoneが日本に上陸する日」などの著書がある香港在住の研究家、山根康宏さんは「スマホといえばiPhone以降、というのが業界の相場観」と話す。甘利氏の発言について、「iモードの技術が注目され、iPhoneの誕生に向けて刺激になった面はあるかもしれないが、今のスマホの発明に直接的につながったとは言えない」とみる。 「スマホは日本の発明」とする甘利氏の発言は、スマホの要件をめぐり専門家の見解が分かれており、真偽を証明することが困難で「判定留保」とする。
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最終更新:朝日新聞デジタル