2020年末から2021年初頭にかけて相次いで発表された、大手キャリアの「オンライン専用プラン」。「20GBで税込み月額3000円未満」という価格設定に加えて、さまざまな制約はあるものの“新プラン”という扱いとなったこともあり、どのキャリア共に申し込みは大盛況のようです。
オンライン専用プランの安さの秘訣(ひけつ)は、全ての手続きをオンラインで完結するように仕向けていること。新規契約、契約内容の変更、サポートの申し込みから解約までWebサイトやスマートフォン用アプリで行います。コストのかかる店舗や電話窓口でのサポートを原則行わないことで、月額料金を抑えているのです。
しかし、キャリアショップ、家電量販店や併売店(複数キャリアを取り扱う携帯電話販売店)に行ってみると、受付できないはずのオンライン専用プランのポスターが貼ってあったり、説明ブースが設置してあったりします。「パッと見」レベルだと、その店舗で申し込みを受け付けているかのようにも思えます。
なぜこのようなことになったのでしょうか。店舗の現役スタッフの話を交えて解説していきます。
一部のキャリアでは、4月9日からこのような掲示を自粛しているという情報があります。この記事は、同日以前に実施したインタビューに基づいて執筆されています。
とある大規模家電量販店では、固定インターネット相談コーナーと併設という形で、オンライン専用プランを含む大手キャリアの料金プランできるコーナーを設置していた 家電量販店の店頭に大きく展開されている価格比較を行っているブースに立ち寄ると、スタッフに「ahamoですか? povoですか? LINEMOですか?」と声をかけられます。そこを離れて端末展示コーナーに行くと、以前なら「機種変更ですか?」「今ならiPhoneが安くなってますよ」といった声がけが多かったのですが、最近は「料金の見直しですか?」と、プランの見直しを促すような声がけが主になりました。
端末の販売よりも料金プランの訴求、しかも自分の店舗では受け付けられないオンライン専用プランも絡めて――あまりに驚いてしまったので、販売店で働く複数のスタッフに話を聞いてみることにしました。
まず、こんな声がありました。
確かに、店頭のブースでは多くの人が足を止め、掲示されているオンライン専用プランについてスタッフに質問をしていました。人々が強い興味を持っていることを伺い知ることができます。
しかし、注目を集めているプランは“オンライン専用”。なぜ、わざわざ店頭に来て質問や問い合わせをするのでしょうか。その理由について別のスタッフに聞いてみると、こんな回答を得られました。
確かに、各社のオンライン専用プランの中には、サービス開始の直前まで「FAQ(よくある質問)」やチャットを含む問い合わせ窓口がなかったり、場合によってはサービス開始と同時に開設したりと、知りたい情報を事前に得る手段が十分に用意されているとはいえない状況でした。だからこそ、店頭に行って質問するという人も少なからずいたのでしょう。
NTTドコモのahamoの場合、9時から20時までチャットサポートをオープンしている オンライン専用プランの申し込みが始まった後は、情報提供も比較的充実し、チャットサポートも本格的に始まりました。本来であれば、店頭での案内が落ち着きそうなものです。しかし、現実はそうなっておらず、さらに“加速”するような向きもありました。
先述の通り、4月9日から一部キャリアでは掲示を自粛するようになったものの、自粛前までは店頭に大きめの訴求ポスターが掲示されていました。ポスター掲示の経緯についても話を聞いてみました。
そもそも、大手キャリアのオンライン専用プランがここまで注目を集めているのは、「携帯電話料金を少しでも安くしたい」と考える人が多いからです。しかし、自分に合ったプランをうまく選択できない人も一定数存在します。
ITmedia Mobileの読者の皆さんなら「自分で調べろ」と思うのかもしれません。しかし、現実問題として、自分では調べられない人や適切な料金プランを判断できない人は少なからずいるのです。スマートフォンユーザー全員が高リテラシーというわけではないということでもあります。
あるスタッフはこう言います。
ユーザーが期待する「値下げ」を実現するために、店頭で取り扱えないオンライン専用プランを含めて案内をすることを前向きに考えているスタッフもいるようです。
ある大規模家電量販店では、屋外のイベントコーナーにも料金相談コーナーが設置されていた自分たちの“実入り”になるとは限らないジレンマも1|2次のページへ
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