人口1億2,601万人、平均年齢は29歳に上昇(メキシコ) | 地域・分析レポート - 海外ビジネス情報 - ジェトロ
国立統計地理情報院(INEGI)が2021年1月25日に発表した2020年の国勢調査結果によると、メキシコの2020年3月15日時点の人口は1億2,601万人。過去10年間で1,307万人増えた。ただし、人口増加率は年率1.2%まで低下した。平均年齢も10年前の26歳から29歳に上昇。若い人口構成の国メキシコでも、高齢化の兆しは見えてきた。
また自動車の世帯普及率は、過去10年間で44.2%から46.5%へと2.3ポイントの上昇にとどまった。一方で、携帯電話は65.1%から87.5%へ、インターネットは21.3%から52.1%へ拡大。生活環境に大きな変化がみられる。
人口増加率は1.2%まで低下、高齢化の兆しも
INEGIは10年ごとに国勢調査を実施。人口や世帯、住居に関するさまざまなデータを収集し、発表している。2020年の国勢調査は、メキシコで新型コロナウイルスの感染拡大が本格化する直前の2020年3月2~27日に実施された。2021年1月に発表されたのは基礎的質問項目についてのもので、この報告もその結果に基づく。なお3月16日には、補足的質問項目に関する結果も発表される。
主な調査結果(表1参照)をみると、メキシコの2020年3月15日時点の人口は1億2,601万4,025人だ。うち、男性が48.8%、女性が51.2%を占める。過去10年間の人口増加率は年平均1.2%。1990~2000年の1.9%、2000~2010年の1.4%と比較すると徐々に低下しているのがわかる。合計特殊出生率は2.1で、10年前の2.3から低下した。メキシコの人口増加率を国連統計(World Population Prospect 2019)から抽出した中南米主要国の増加率と比較すると、ブラジルの0.78%、アルゼンチンの0.96%よりは高い。しかし、チリ(1.24%)とほぼ同率で、コロンビアの1.37%、ペルーの1.58%より低いことになる。平均年齢は29歳。2010年時点の26歳から上昇したとはいえ、依然として若い人口構成だ。しかし、少子高齢化の兆しはある。14歳以下の若年人口に占める65歳以上の高齢者人口の比率(老年化指数)をみると、2000年の14.6%、2010年の21.3%から、2020年には32.5%まで上昇しているのだ。
他方、就労可能人口(15~64歳)に占める従属人口(14歳以下および65歳以上)の比率(従属人口指数)は50.2%。前回の55.2%からさらに低下した。メキシコは人口ボーナス期に入っているためだ。国家人口評議会(CONAPO)による2018年9月14日に発表によると、従属比率が最も下がる人口ボーナスのピークは2029~2031年に到来する。この時期に、45.85%まで低下する見通しだ。
5歳間隔の年齢層で人口ピラミッドを作成すると、最も人口が多いのは10~14歳。全体の8.70%を占める。続いて多いのは15~19歳の層で8.59%、5~9歳(8.56%)、20~24歳(8.29%)と続く(図1参照)。
指標 | 単位 | 2000年 | 2010年 | 2020年 |
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人口 | 1,000人 | 97,483 | 112,337 | 126,014 |
人口増加率(注1) | % | 1.9 | 1.4 | 1.2 |
平均年齢 | 歳 | 22 | 26 | 29 |
老年化指数(注2) | % | 14.6 | 21.3 | 32.5 |
従属人口指数(注3) | % | 64.3 | 55.2 | 50.2 |
合計特殊出生率 | 人/女性 | 2.6 | 2.3 | 2.1 |
非識字率 | % | 9.5 | 6.9 | 4.7 |
平均就学年数 | 年 | 7.5 | 8.6 | 9.7 |
高等教育終了比率 | % | 11.9 | 17.6 | 21.6 |
健康保険カバー率 | % | 40.1 | 64.6 | 73.5 |
住宅数 | 1,000戸 | 21,943 | 28,608 | 35,219 |
1戸当たり居住者数 | 人/戸 | 4.4 | 3.9 | 3.6 |
指標 | 単位 | 2000年 | 2010年 | 2020年 |
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電気 | % | 95.0 | 97.8 | 99.0 |
水道 | % | 88.8 | 91.5 | 96.3 |
下水配管 | % | 78.1 | 90.3 | 95.5 |
テレビ | % | 85.9 | 92.6 | 91.1 |
冷蔵庫 | % | 68.5 | 82.1 | 87.6 |
ラジオ | % | 84.8 | 79.5 | 67.6 |
洗濯機 | % | 52.0 | 66.4 | 72.8 |
自動車・ピックアップ | % | 32.5 | 44.2 | 46.5 |
固定電話 | % | 36.2 | 43.2 | 37.5 |
携帯電話 | % | N.A. | 65.1 | 87.5 |
パソコン | % | 9.3 | 29.4 | 37.6 |
インターネット | % | N.A. | 21.3 | 52.1 |
有料テレビ | % | N.A. | N.A. | 40.6 |
注1:過去10年間の年平均増加率。注2:14歳以下の人口に占める65歳以上の人口の比率。注3:14歳以下及び65歳以上の人口が15~64歳の人口に占める比率。注4:全住戸に占める当該財・サービスを有する住戸の比率出所:INEGI,Censo de Población y Vivienda 2000, 2010, 2020
なお、主要都市圏の人口(図2参照)をみると、メキシコ市首都圏は2,180万4,515人。全人口の17.3%を占める。第2位は、ヌエボレオン州のモンテレイ市都市圏だ。2010年比30.1%増えて534万1,171人になり、前回(2010年)調査時に2位だったハリスコ州のグアダラハラ都市圏(2020年は526万8,642人)を抜いた。過去10年間の人口増加率が最も高いのは、ケレタロ州のケレタロ市都市圏。10年間で45.3%増えて159万4,212人に達した。
教育環境は改善も、依然として大卒比率は2割強
教育・医療などの社会指標をみると、2020年時点で平均就学年数は9.7年だ。2010年比で1.1ポイント上昇した。すなわち、大多数の国民が義務教育の9年は終了しているようだ。
25歳以上の人口に占める高等専門学校や大学等の高等教育を受けた人口の比率は2020年に21.6%だった。10年前から4.0ポイント上昇したことになる。しかし、OECD諸国の平均(2019年)は39.6%だ(OECD、Education at a Glance 2020)。他国と比べて決して高い比率ではない。
健康保険のカバー率は73.5%となり、10年前と比較すると8.9%ポイント上昇した。もっとも、2015年の中間調査(人口・世帯に関する大規模標本調査)時の82.2%、2017年の全国雇用社会保険調査(ENESS 2017)時点の82.7%と比べると低下している。2004年に導入された民衆保険(Seguro Popular)の普及拡大(注1、2013年8月30日付ビジネス短信参照)により、健康保険のカバー率は2000年代以降に急速に上昇していった。一方で、アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領は2019年8月、民衆保険を廃止。代わりに国家福祉保健機構(INSABI)を設立する法案を国会に提出した。同法案は同年11月に国会を通過。法改正が官報で公布された。その結果、2020年1月からIMSSなどの公的医療保険に加入していない全ての国民が、INSABI管轄の公立病院で無償の医療サービスを受けられることになった。ただし、2020年3月時点でINSABIの医療サービス受益者は全国民の26.1%に過ぎない。対して民衆保険の加入率は、2015年中間調査で49.9%、ENESS 2017で39.3%だった。これを考え合わせると、民衆保険からINSABIへの移行は十分に進んでいないように思える。
インターネットの家庭への普及率が5割を超える
各住居での財やサービスの普及率をみると、電気や上下水道の整備は一部の遠隔地農村を除けば、ほぼ全国に行き届いている。電気や水道が使えない住宅はわずかだ。テレビの普及率も9割を超える。これに対して、冷蔵庫(87.6%)や洗濯機(72.8%)といった基本的な白物家電の普及はまだ拡大の余地がある。自動車の普及率は2020年時点で46.5%。10年前と比べて2.3ポイントの増加にとどまっている。
他方、携帯電話やインターネットなど情報通信技術(ICT)関連の普及は拡大している。携帯電話の家庭への普及率は87.5%、インターネットは52.1%、パソコンは37.6%に達した。インターネット世帯普及率は、過去10年間で30.8ポイントも拡大している。この背景には、電話、有料テレビ、インターネットをパッケージにしたトリプルプレイのサービスが比較的安価な価格で提供されることになった影響が大きい。なお、有料テレビ・サービスの普及率は40.6%と、4割を超えている。
他方で、他国と同様、携帯電話と対照的に固定電話の普及率は低下傾向だ。また、スマートフォンの普及拡大によりラジオなどのオーディオ機器の普及率が低下しつつある。
バヒオ地域でも教育レベルなどに格差
今回の国勢調査結果から、日本企業の進出が多い主要州での社会人口統計指標を表2にまとめた。メキシコ市、人口規模第2位の都市モンテレイがあるヌエボレオン州、第3の都市グアダラハラがあるハリスコ州、対米輸出向け製造業が発達した北部国境の主要工業州(バハ・カリフォルニア州、コアウイラ州など)の生活水準、教育レベルは総じて高い。
指標 | 単位 | 全国 | メキシコ市 | グアナファト | ケレタロ | アグアスカリエンテス | ヌエボレオン |
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人口 | 1,000人 | 126,014 | 9,210 | 6,167 | 2,368 | 1,426 | 5,784 |
平均年齢 | 歳 | 29 | 35 | 28 | 29 | 27 | 30 |
人口密度 | 人/km2 | 64.3 | 6,163.3 | 201.5 | 202.6 | 253.9 | 90.2 |
住宅数 | 1,000戸 | 35,219 | 2,756 | 1,587 | 668,487 | 386 | 1,655 |
1戸当たり居住者数 | 人/戸 | 3.56 | 3.32 | 3.87 | 3.53 | 3.68 | 3.49 |
ICT関連世帯普及率インターネット | % | 52.1 | 75.7 | 48.2 | 64.4 | 61.1 | 69.6 |
ICT関連世帯普及率有料テレビ | % | 43.3 | 46.9 | 43.0 | 57.2 | 45.1 | 48.8 |
ICT関連世帯普及率OTTサービス | % | 18.8 | 34.8 | 15.2 | 27.5 | 25.6 | 29.7 |
ICT関連世帯普及率コンピュータ | % | 37.6 | 59.9 | 34.7 | 48.0 | 45.9 | 47.8 |
ICT関連世帯普及率携帯電話 | % | 87.5 | 92.2 | 87.2 | 90.9 | 93.2 | 93.0 |
ICT関連世帯普及率ゲーム機 | % | 11.5 | 20.7 | 10.6 | 15.9 | 18.2 | 18.5 |
自動車世帯普及率 | % | 46.5 | 46.8 | 50.7 | 58.8 | 62.3 | 58.5 |
オートバイ世帯普及率 | % | 12.0 | 7.8 | 18.6 | 7.6 | 11.8 | 5.8 |
高等教育終了比率 | % | 21.6 | 34.6 | 15.9 | 27.5 | 24.6 | 26.2 |
健康保険カバー率 | % | 73.5 | 72.6 | 79.0 | 79.1 | 81.4 | 80.9 |
指標 | 単位 | サンルイスポトシ | ハリスコ | バハカリフォルニア | メキシコ州 | コアウイラ | サカテカス |
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人口 | 1,000人 | 2,822 | 8,348 | 3,769 | 16,992 | 3,147 | 1,622 |
平均年齢 | 歳 | 29 | 29 | 30 | 30 | 29 | 28 |
人口密度 | 人/km2 | 46.2 | 106.2 | 52.8 | 760.2 | 20.8 | 21.5 |
住宅数 | 1,000戸 | 775 | 2,331 | 1,149 | 4,569 | 901 | 443 |
1戸当たり居住者数 | 人/戸 | 3.63 | 3.56 | 3.26 | 3.71 | 3.48 | 3.65 |
ICT関連世帯普及率インターネット | % | 44.5 | 61.8 | 69.9 | 56.2 | 57.7 | 46.3 |
ICT関連世帯普及率有料テレビ | % | 44.9 | 51.5 | 54.0 | 34.2 | 49.3 | 48.5 |
ICT関連世帯普及率OTTサービス | % | 16.7 | 24.6 | 33.6 | 18.0 | 21.8 | 11.7 |
ICT関連世帯普及率コンピュータ | % | 34.0 | 44.5 | 50.4 | 40.6 | 40.9 | 31.5 |
ICT関連世帯普及率携帯電話 | % | 84.5 | 91.7 | 94.4 | 88.8 | 91.6 | 84.3 |
ICT関連世帯普及率ゲーム機 | % | 10.8 | 16.1 | 19.0 | 12.6 | 13.8 | 8.5 |
自動車世帯普及率 | % | 50.0 | 56.0 | 69.9 | 42.6 | 61.6 | 60.4 |
オートバイ世帯普及率 | % | 16.9 | 16.8 | 5.8 | 10.2 | 7.5 | 20.5 |
高等教育終了比率 | % | 20.6 | 22.3 | 21.6 | 21.4 | 23.7 | 17.5 |
健康保険カバー率 | % | 82.5 | 69.9 | 77.1 | 66.3 | 80.7 | 79.7 |
出所:INEGI「2020年国勢調査」データから作成
他方、自動車産業を中心に日本企業の進出が盛んな中央高原(通称「バヒオ」地域)の諸州ではどうか。ケレタロ州やアグアスカリエンテス州では、生活水準・教育レベルが相対的に高い。ちなみに、ケレタロ州は、自動車部品、航空機部品、白物家電の3分野の工場が集積する工業州だ。また、アグアスカリエンテス州では日産自動車が3工場(ダイムラーとの合弁工場を含む)を有するなど、自動車産業の発展が著しい。
対して、同じバヒオ地域でも、グアナファト州やサンルイスポトシ州、サカテカス州(注2)は相対的に遅れている。例えば高等教育の修了比率は、3州とも全国平均を下回る。これらのうちグアナファト州は、今でこそ完成車メーカー5社が工場を持つ自動車産業の一大集積地と言える。しかし、歴史的にみると農業と皮革履物などの軽工業が経済活動の主体を占めていた州だ。そのため、ケレタロ州やアグアスカリエンテス州と比べると、依然として優秀なエンジニアや熟練労働者などの採用に苦慮することがある。