まず基本となるのが所得税の算出方法。これを理解しないと節税は始まらない。所得税の算出式は以下のとおりだ。
所得税の計算式。納税額を知るには売り上げ、経費、各種所得控除を把握する必要がある
売り上げは1月から12月まで1年間の売り上げ=年商だ。年をまたぐ売り上げは注意しよう。例えば、12月に納品し請求書を送り、翌年の1月末に入金された売り上げは今年の売り上げとなる。
経費も同様に年末にクレジットカードで購入したものは、引き落としが2月でも今年の経費となる。経費にできるのは事業に必要なさまざまな費用だ。パソコンで原稿を書く仕事であれば、パソコンの購入費、電気代、ネット回線費、修理費なども経費となる。売り上げから経費を引いたものが所得となる。
各種所得控除は、個人に関するものが大半だ。代表的な控除は基礎控除、配偶者控除、扶養控除、社会保険料控除、生命保険料控除、医療費控除などで、ほとんどの控除はサラリーマンと共通している。
所得から各種所得控除を引いたものが課税所得。この課税所得に税率を掛けると所得税額が算出できる。
所得税算出の概念図
税率を見てみよう。所得税の税率は以下の表となる。
所得税の税率表
表を見ると、課税所得の額に応じて5%から45%まで税率は上がっていくが、課税所得が195万円から196万円になったら納税額がいきなり倍になるわけでない。課税所得全体にその税率が掛かるわけではなく、例えば課税所得が350万円の場合、195万円までの部分の5%、195万円を超え330万円の部分の10%、330万円を超え350万円の部分の20%を合計した額が納税額となる。実際に計算してみよう。
課税所得350万円の所得税
195万円×5%=9万7500円 ① 135万円(330万円-195万円)×10%=13万5000円 ② 20万円(350万円-330万円)×20%=4万円 ③
①+②+③=9万7500円+13万5000円+4万円=27万2500円
となる。税率表の右側にある控除額を使用すると、簡単に計算することができる。
課税所得金額×税率-控除額=納税額
350万円×20%-42万7500円=27万2500円
税率の上がる境界線で神経質になる必要はないが、税率が高い(=課税所得が多い)人ほど節税効果が高いことは認識したい。課税所得が350万円の人が経費を20万円増やすと、増えた経費の20%=4万円の節税となるが、課税所得が300万円の人は、20万円の経費の10%=2万円の節税にとどまる。
課税所得が195万円以下の人は積極的に節税をする必要はない。年末に経費を増やせばその年の所得税は減るが、年始の経費を増やせば来年の所得税が減る。2年を通して計算すれば同じなので、課税所得195万円以下の人に必要なのは「売り上げを増やす=もっと稼ぐ」ことだ。
所得税の計算式を理解すると、納税額を減らす(=節税)方法も理解できるはずだ。納税額を減らすには
1.売り上げを減らす 2.経費を増やす 3.各種所得控除を増やす
が考えられるが、売り上げを減らすのは望ましい方法ではないので「経費を増やす」「控除を増やす」が節税の基本となる。
「経費を増やす」「控除を増やす」が節税の基本
住民税の税率はほぼ全国一律10%なのでザックリとした計算は、経費を10万円増やすと課税所得が10万円減り、その10%(税率)=1万円の節税となる。国民健康保険は自治体ごとに計算式が異なり、同じ自治体でも頻繁に(筆者が住民票を置く名古屋市は毎年)係数が変更される。加えて自治体(=住む市町村)により保険料は倍以上の差がある。節税による保険料の削減効果を正確に把握するには、自分自身の住む市町村のウェブサイトで算出方法を確認をしよう。住民税も国民健康保険も所得税に連動し上下するので、所得税を減らすことに注力すればよい結果につながるはずだ。