期待してた人、ごめんなさい。
このたびOnePlus初のスマートウォッチ「OnePlus Watch」がアメリカで発売されました。ひと月前の製品発表時に米Gizmodoのビクトリア記者が期待感みなぎるポジティブな記事を書いていたのですが、実際の使用感が気になるところ。そこで彼女がOnePlus Watchを1週間ほどテストしてみた結果、ひどく期待はずれだったようです。
「最悪なスマートウォッチ」と言い切るのにはなかなかの覚悟が必要です。ビクトリア記者自身も「こんなこと書いていいの?」とためらっていたようですが、OnePlus Watchがあまりにも誤作動・誤測定・誤表示を連発するのでとうとう堪忍袋の緒が切れちゃったみたいですね…。
というわけで、ビクトリア記者の激辛レビューをどうぞ!
こんなにひどいとは。
フラッグシップモデルがすべての面において失敗するなんて珍しいのですが、OnePlus Watchはそれをやってしまいました。
テスト期間中、とにかくありとあらゆる問題が発生しました。アクティビティトラッキングは不正確でしたし、ちゃんと起きてるのに睡眠中と判定されたりもしました。歩数カウントはほかのフィットネストラッカーと比べて1万歩以上の誤差がありました。1万歩ですよ? あと、英単位系に設定したはずなのに、なぜかたまにメートル制のデータを出してきたり。気分屋なんでしょうか。極めつけは、OnePlus Watchのリリース発表時に注目を集めた看板機能が、なんとローンチ時にはまだ用意されていなかったという体たらく。
このレビュー記事を書くとき、正直迷いました。「最悪なスマートウォッチ」なんて書いたら大げさすぎるのではないかと。だってほら、通知だけはちゃんと送ってきてくれてるじゃないですか。う〜ん。
と悩んでいたら、にわかにOnePlus Watchをはめた腕から蜂の巣をつついたような喧騒が。4時間前に送られてきていたメールの受信通知が、40件ほど一気に押し寄せてきました。
このスマートウォッチのひどさったら、強調したくても強調しきれません。
OnePlus Watch
これは何?:OnePlus初のスマートウォッチ。
価格:159ドル(約1万7,000円)。
好きなところ:1.39インチのOLEDディスプレイ。
好きじゃないところ:ディスプレイ以外のすべて。
デザインはまあまあ
OnePlus Watchを作った人たちは、これぞスマートウォッチデザインの頂点だと自負しているかもしれませんが、私にはそうは思えません。醜くはないものの、斬新な要素がひとつもなく、安易なデザインになってしまっています。ベゼルの右側にはボタンがふたつあり、シリコン製のベルトは交換できます。外見はいたって普通のスマートウォッチです。
もっとかっこいい限定モデルもあるのですが、残念ながらアメリカで手に入るのはこの無難なブラックのみ。腕につけてみたかんじはそこそこです。ウォッチケースがデカすぎて、なにやらお盆を乗せているかのように見えるのが難点ですが。
ケースの直径は46mmで、私がこれまでテストした中で2番目に大きいスマートウォッチです(これよりデカいのは「Suunto 7」のみ)。腕が太くてベルトがゆるゆるしないなら問題ないサイズかもしれません。
しかし、私の場合は一番小さな穴に通してもベルトがゆるすぎたので、手首からひじのほうに向かって落ち着くところまでスライドさせていった結果、前腕にはめるような格好になってしまいました。私は小柄なので手首も細いほうだとは思うんですが、試しに身長180センチ・中肉中背の主人にも試してもらったところ、同じく「大きすぎるし、つけ心地がよくないね」っていう結果になりました。
もちろん、この大きさなりにいいところがあるのは認めます。1.39インチのOLEDディスプレイは色が鮮やかで、すごくきれいです。通知が読みやすいし、ベゼルの存在感もほかのスマートウォッチみたいに気になりません。プロセッサがサクサク動いてくれるのでスワイプにも一瞬で反応してくれます。強いていうなら、直射日光の下でもうちょっと見えやすかったらいいなって思いますが、これは蛇足です。
機能もまあまあ(のはず)
ハードウェア的にも申し分ありません。RAMは1GBで、ストレージは4GBあります。さらに、心拍数モニター、GPS・加速度計内蔵で、アクティビティの自動計測機能もついています。NFC決済はできませんし、サードパーティアプリもありませんが、このスマートウォッチに求めているものはそこじゃないからいいんです。もしOnePlus TVをお持ちなら、このスマートウォッチをリモコンがわりに使えます。でも私はOnePlus TVをお持ちじゃないので、リモコンの使い勝手についてはなんとも言えません。OnePlus TV、まだアメリカに来てないですし。
とまあ、ここまで書いたところでは、「OnePlus Watchってシンプルで、ちょっと大きすぎるけどまずまずの機能を備えているじゃない?」ってことになります。それだけだったらいいんです。ところが実際使ってみて、OnePlus Watchはすべてのウェアラブルデバイスに対する冒涜だと思い知りました。
使ってみてわかったこと
私がこれまで5年に渡ってスマートウォッチやフィットネストラッカーをテストし、レビューしてきた中で、OnePlus Watchとその専用アプリほど不具合の度合いが著しいものはありませんでした。
詳しい説明に入る前に、まず前置きさせてください。私を含むレビュアーがOnePlusから渡されたのは、専用アプリ「OnePlus Health」のベータ版でした。ですから、まだベータ版だったために不具合が生じた可能性もあります。近い将来、新しいバージョンに改良されていることを切に願います。じゃないと、OnePlus社の信頼に関わる問題です。
時空を飛び越えて未来のOnePlus Healthアプリが正常に動作しているか確かめることはできません。でも、今この時点で使ってみた感想は「とにかくひどい」です。
レビュー中にOnePlusからアプリの修正パッチが届き、ローンチ時にユーザーが使用するものと同じ(たぶん)バージョンを試すことができました。OnePlusの広報さん曰く、「ヘルス・フィットネス・管理機能の改良と、50種類ものウォッチフェイスの追加と、その他のアップデート」が含まれていたそうですが、レビュー期間が短すぎてすべての問題が解決されているかどうかは確認できませんでした。というか、あまりにも問題がありすぎて、もはやアプリのアップデートどころではない気がしました。
ちなみに、今後も4月中旬と5月中旬に自動アップデートが行なわれるそうで、睡眠トラッキング機能、野外バイクアクティビティの追加(これらはスマートウォッチ上ではすでに可能)、GPS機能の最適化と、約束どおり110種類のワークアウトモードが追加される予定だそうです(現時点では14種類しか使えません)。
ひとつだけ言えるのは、このアプリが「ちゃんと」動作することです。スマートウォッチを初期設定するのは簡単でしたし、スマートフォンに専用アプリを導入して連携するのも簡単。メニューやデータの閲覧もスムーズに行なえました。ウォッチのディスプレイ上でスクロールしてメニューやウィジェットを操作するのも簡単。でも、それ以外のすべてがダメでした。
スマートウォッチとアプリが連動しない
まず最初に、睡眠トラッキング機能がスマートフォン上のアプリに反映されなかったため、睡眠トラッキングを行なえませんでした。パルスオキシメーター機能も同様で、ウォッチのセンサーは機能しているのにアプリで確認できませんでした。どういうことかというと、ウォッチ上では計測しているのに、そのデータをスマートフォンの大きなスクリーン上で確認できないので、パターンを見出したりだとか有意義な分析を行なえないんです。
信頼性はまずまずでしたが、時々ものすごくズレることがありました。たとえば、ある日家族に緊急事態が起こったため一晩寝ずに過ごしたことがあったんですが、OnePlus Watchは私は夜8時に就寝し、たっぷり12時間の睡眠を取ったと記録していました。今後は睡眠と酸素濃度のデータもスマホアプリで閲覧可能になるとのことですが、なぜ最初から入れなかったのでしょう?
データを閲覧できたところで、そのデタラメさにはただただ驚かされました。たとえば、3マイル(4.8km)のランニング後に2.8マイル(4.5km)ウォーキングした日。Apple Watch SEでは歩数が1万5417ステップに達していましたが、OnePlus Watchでは103ステップ。これまでもフィットネストラッカー間でズレを確認したことはありましたが、まさか1万5314歩も差が出るとは。しかも、OnePlus Watch上ではランニングもウォーキングもちゃんと記録されていて、4,301ステップ歩いたことになっていたにも関わらず、スマホアプリのダッシュボード上は虚無。まったくわけがわかりません。
そもそもスマートウォッチの計測機能があやしい
また、ワークアウト自体も正しく記録されていなかったりしました。Apple Watchとスマホのランアプリがそれぞれ3マイル(4.8km)、2.9マイル(4.7km)と記録していたランニングが、OnePlus Watch上では1.96マイル(3.15km)と記録されていたことも。スマートウォッチ自体がアクティビティを正しくトラッキングできていなかったことになります。
さらにおかしなことに、スマートウォッチ上では走った距離がkm表示だったのにも関わらず、1マイルを走るごとに通知を送ってきました。なんですが、実際は2マイルを走った時点で「2km」と通知してくるもんだから混乱しまくりです。走り終わってペースを確認すると、6分38秒/マイルという物理の法則に反した数値が出ていました。その後、ペースが修正されて17分/マイルになってましたが、それも実際の11分53秒とはかけ離れていました。
これが、たとえばインターバルランの測定だったら理解の余地はあります。インターバルのように走る速度が変動するアクティビティの場合、スマートウォッチやフィットネストラッカーに内蔵されているGPS機能の更新ペースによって多少は計測がズレ込むことがあるからです。でも、OnePlus Watchがおかしなことになったのは、よく晴れたGPSシグナルを受信しやすい日でしたし、ランニング自体もゆっくりとステディなペースで行ないました。走り始める前にOnePlus WatchがGPSシグナルを受信していることは確認しましたし、ランニング中にGPSシグナルが途切れたことを知らせる通知は一切ありませんでした。では、なぜマップがまったく記録されておらず、数値がデタラメだったのでしょう?
どんなウェアラブルを使っても、アクティビティトラッキング(特に自動検出している場合)には誤差がつきものです。例外なことも起こります。でも、OnePlus Watchによって計測されたおかしな数値は決して例外ではありませんでした。なぜなら、OnePlus Watchで計測したすべてのアクティビティにおいておかしな数値が確認されたからです。まともに計測されたのは経過時間のみでした。
記録の仕方も問題だらけ
もしこれが単に専用アプリの問題だったらまだ救いがあるというもの。OnePlus Watch自体は問題ないよってことになりますからね。しかし、厳しい現実がありました。アプリよりかは少しマシなだけで、OnePlus Watch自体もダメでした。心拍数と酸素濃度だけはしっかり計測しているようでした。でも、その計測した数値を記録するとなると、もうダメでした。
なぜなんでしょう? 本当にわけがわかりません。スマホアプリはスマートウォッチと連動しているはずなのに、スマホ上で見るデータが腕のウォッチに表示されている数値と合わないんです。本日、私はすでに2.4マイル(3.9km)歩き、5,350ステップを達成していますが、ウォッチ上では0.09km(すでに英単位系に設定し直したはずなのにね)、154ステップとなっています。ところが、スマホアプリ上では1.11マイル(1.8km)、2,799ステップとなっています。先ほど40分かけて2.1マイル(3.4km)のウォーキングをしてきましたが、OnePlus Watch上では1.88マイル(3.02km)、4,727ステップとなってます。でもスマホアプリのダッシュボード上にはこのデータが反映されていません。たすけて、頭がおかしくなりそう!
しかも、続きがあります。いつも同じように間違ってくれたらまだいいのに、スマホアプリの不正確さには一貫性というものがありませんでした。ある日はステップ数で、また別の日は心拍数というように、まったく予測がつきませんでした。
ちょうど今朝、2時間ほど座りっぱなしだったときに心拍数が179bpmになってました。それって心拍数ゾーン5の数値です。かなりキツめな運動をしているときにたたき出す数値です。ところが、OnePlus Watchを見たら80bpmになってました。あらかじめ心拍数に異常が出たらアラートを送るよう設定してあったので、安静時にいきなり心拍数が179bpmにまで上がっていたらアラートが送られてきたはずです。でもアラートはきませんでした。
もうひとつ理解できなかったのは、OnePlus Watchが午後と夕方の時間帯にとつぜん記録を中断してしまうこと。お風呂に入るときとバッテリーを充電するとき以外はずっとつけっぱなしだったんですけど、それでもなぜかストレス値と心拍数の計測が午後1時を過ぎるとぱったり止まってしまうことがありました。あと、ストレス値の計測自体にも問題がありましたね。先述の緊急事態が発生したとき、私はかなりのストレスにさらされていたのですが、OnePlus Watchによれば私はチルしてた模様。っていうか、私の存在自体が不安のかたまりみたいなもんですけど、OnePlusの判断では常にチルしてるようです。
注目の充電性能は
さて、OnePlus Watchと言えば、当初その充電性能に熱い関心が寄せられましたね。急速充電機能の「Warp Charge」により、5分間の充電で丸一日使えるようになるほか、フル充電に要する時間はわずか20分。これで一度の充電で1〜2週間は使えるって謳われていたはずでした。
そこで、テストする前にOnePlus Watchをフル充電しました。2日と半日が過ぎた頃、OnePlus Watchのバッテリーは9%にまで落ちこんでいました。ちょっと待って、最低でも1週間は使えるはずだったんじゃ?
しかしながら、急速充電機能は健在でしたよ。バッテリー残量9%から100%にチャージするまでに40分ほどしかかかりませんでした。参考までに、大抵のスマートウォッチはフル充電するのに1〜2.5時間ぐらいかかります。OnePlus Watchの2度めの充電時以降は以前よりバッテリーの消費がゆるやかになった気がしてますし、バッテリーの持ちもOnePlus社が宣伝していたぐらいの水準になってきたんじゃないかと。でもこの間、ずっと同じようなアクティビティを計測して、同じぐらいGPS機能を使っていたので、なぜ急にバッテリーの持ちが向上したのかはわかりません。
不良品なのでは? と疑うレベル
テストしているスマートウォッチがここまでダメだと、もしかしたら不良品なんじゃないかと疑いますよね。しかし、同時期にテストを行なっていたほかのレビュアーも同じような体験をしていたことから、私がレビューした機材が例外におかしいわけではなかったようです。度重なる誤測定についてOnePlusにも問い合わせてみたところ、広報担当者によれば睡眠トラッキング機能については「把握している」とのことでした。しかしながら、この情報が事前にレビュアーに共有されることはありませんでした。OnePlus社がOnePlus Watchが抱えている諸問題について知らないわけはないと思うんですが、そんなことももう後の祭りです。
当初、OnePlus Watchの発表を聞いて、リーズナブルなお値段と急速充電機能に惹かれました。でもレビューしてみて数々の問題に直面した以上、これらの諸問題が解決されないかぎりはこのウォッチをオススメすることは到底できません。
もしかしたら、OnePlusはいま産みの苦しみを体験しているのかもしれません。だってOnePlus Watchは同社初のスマートウォッチですから。
あえて厳しいことを言うならば、同価格帯かそれより安いスマートウォッチはすでに市場にたくさん出回っています。ですから、OnePlus Watchがデザイン面、または機能面においてのイノベーションか、素晴らしいコストパフォーマンスを提供していないかぎりは存在価値がありません。これらすべてにおいてOnePlus Watchは見劣っていました。高台から見事な飛び込みをキメて波風を立てようとしたOnePlusは、無残なまでの腹打ちをしでかしてしまったようです。